平太郎には当時十七歳の、求馬もとめと云う嫡子ちゃくしがあった。求馬は早速おおやけゆるしを得て、江越喜三郎えごしきさぶろうと云う若党と共に、当時の武士の習慣通り、敵打かたきうちの旅にのぼる事になった。
或敵打の話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)