水口みずくち)” の例文
しきいのきしむ雨戸をこじ明けて、水口みずくちから踏み込むと、半七は先ず第一の獲物えものを発見した。それは野暮な赤い櫛で、土間に落ちていた。
半七捕物帳:60 青山の仇討 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
彼はそれでも見えがくれに五、六間ついて行って、お鉄が主人の家の水口みずくちへはいるのを見とどけて、それから三河町の家へ帰った。
半七捕物帳:37 松茸 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
半七は手拭を取って頬かむりをして、草履の足音を忍ばせながら、河内屋の水口みずくちに身をよせていると、ひとりの若い女が手桶をさげて来た。
半七捕物帳:30 あま酒売 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それが耳について思わず立ちどまる途端に、水口みずくちの戸を押し倒すような物音がして、ひとりの女が露路の中から転がるように駈け出して来た。
半七捕物帳:16 津の国屋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
お銀はさらに台所へまわって、水口みずくちの戸をすこし明けてうかがうと、溝口と元吉は女を介抱して奥へ連れ込んで行くらしい。元吉は夫婦者で、お新という若い女房がある。
探偵夜話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
お滝が起きると、すぐに水口みずくちの戸を一枚あけて置いたので、得体えたいのわからない闖入者は薄暗がりの家の奥へまっしぐらに飛び込んで、新兵衛の蚊帳のなかへ鼠のようにくぐって這入った。
半七捕物帳:19 お照の父 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
時候は盆前、娘の一周忌と、うまく道具が揃っているもんだから、夜ふけに水口みずくちからそっと忍び込んで、師匠を殺す、蛇をまき付ける。すべておあつらえの通りの怪談が出来あがったんです。
半七捕物帳:05 お化け師匠 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)