染着せんちやく)” の例文
また或時は欲求した染着せんちやくした心のとりことなつて、美しいものすぐれたものに向つてその魂を浪費した。かれは本当なもの真剣なものの探検者であつた。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
他を陥れなければ止まない猜疑心きいぎしん泥土でいど蹂躙じうりんせられた慈悲、深く染着せんちやくしつつもその染着をわるいと思はない心、さういふ光景は一々かれの眼に映つて見えた。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
デカダンはデカダンと相食あひはんでゐる。悪と悪とは互にそのきばを磨いてゐる。それは皆な我にちやくした処から起つて来る。現に自分すらその染着せんちやくを捨てることが出来なかつた。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)