東紅梅町ひがしこうばいちやうのあの家は書斎も客室きやくまも二階にあつたのでした。階下した二室ふたま続いてあつた六畳にわかれて親子は寝て居ました。亡霊の私が出掛けてくのは無論よる夜中よなかなのです。
遺書 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)