曳船ひきぶね)” の例文
おいせがれにこの『ヴォルガの舟唄』をかけさせて、誰が描いたか知らぬが、ヴォルガ河曳船ひきぶねの暗澹たる絵を思い出しながら、抵抗療法的な快味を貪っていたものだ。
信号旗をあげて、港の水先案内人をよび、曳船ひきぶねにひかれて、龍睡丸は港内にはいって、碇泊した。
無人島に生きる十六人 (新字新仮名) / 須川邦彦(著)
発動機船が、泥をつんだ大きな曳船ひきぶねを三つもあとにくっつけて、ゴトゴトと紫の煙を吐きながら川下へ下っていった。かもめが五、六羽、風にふきながされるようにして細長いくちばしをカツカツと叩いていた。
ヒルミ夫人の冷蔵鞄 (新字新仮名) / 海野十三丘丘十郎(著)
「よし、われわれは、船長の同情者になろう。そうだ、同情の手はじめに、入港税、碇泊船税、また、水先案内料と、曳船ひきぶね料金は、役所から寄付しよう。そのほか、なにか助力することはないか」
無人島に生きる十六人 (新字新仮名) / 須川邦彦(著)