“徨（さまよ）” の例文
だが他の連中は白い着物を着たまま群をなして徨（さまよ）い歩く中に見付かって、再び送還されたのに違いない。私はとうとう密航を思い切らねばならなかった。
玄海灘密航 (新字新仮名) ／ 金史良(著)
そして深い雨霧が街路灯に薄黄色い円を描く夜明けの街や、野菜や真桑瓜売りの荷車が雑沓する市場や、静かに濡れそぼつ大同江の船着場などをとぼとぼ徨（さまよ）い歩いた。
土城廊 (新字新仮名) ／ 金史良(著)
彼はその中を恰も泳ぎもがきながら救いを求めるように慌てふためきつつ徨（さまよ）い廻った。だが迷路は思いのままにぐるぐると筋を引いているので、どんなに歩けど歩けど果しがない。
天馬 (新字新仮名) ／ 金史良(著)
だがこの二三日来元三はどんなに街の中を徨（さまよ）い人の家を質ね廻ったことだろう。
土城廊 (新字新仮名) ／ 金史良(著)