かつ散るくれないなびいたのは、夫人のつまと軒のたいで、鯛は恵比寿えびす引抱ひっかかえた処の絵を、色はせたが紺暖簾こんのれんに染めて掛けた、一軒(御染物処おんそめものどころ)があったのである。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)