左前ひだりまえ)” の例文
もう一つにはお常も人情、むかしは世話になった由兵衛が左前ひだりまえになっているのを知ると、さすがに気の毒だという念も起る。
(新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
だんだん左前ひだりまえになって職人もひとり出、ふたり出、親父の代から住みこんでいる三人ばかりの下染したぞめ家内かないのおもんを相手に張りあいのない様子で商売をつづけていた。
顎十郎捕物帳:18 永代経 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
水力電気! 先代が左前ひだりまえにして残した家産の益〻傾くにつれて、そればかり考える。尤も他に挽回の道はない。小作は我儘になるばかりだ。何彼と言って毎年のように年貢を値切る。
村の成功者 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
お磯の家は相当の百姓だったそうですが、親父の駒八の代になってから、だんだんに左前ひだりまえになって総領娘のお熊に婿を取ると、乳呑児ちのみごひとりを残して、その婿が死ぬ。