町中まちじゅうの堀割に沿うて夏の夕を歩む時、自分は黙阿弥もくあみ翁の書いた『島鵆月白浪しまちどりつきのしらなみ』に雁金かりがねに結びし蚊帳もきのふけふ——と清元きよもと出語でがたりがある妾宅の場を見るような三味線的情調に酔う事がしばしばある。
夏の町 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
○十二月、新富座の二番目に「島鵆月白浪しまちどりつきのしらなみ
明治演劇年表 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)