たたく者は幾人と数えるほどで寂々寥々じゃくじゃくりょうりょうたるものであったさればこそ小鳥道楽などにふけっているひまがあったのであるただし春琴が生田流の琴においても三絃においても当時大阪第一流の名手であったことは決して彼女の自負のみにあらず公平な者はみな認めていた春琴の傲慢ごうまん
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)