墨痕淋漓ぼっこんりんり)” の例文
墨痕淋漓ぼっこんりんり、夜目にもしるく書きなぐられた紙片のしずかにしらじらとぶら下っていることを誰も不思議と感じないのをどうしよう……
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
懲役人ちょうえきにんの着る衣服と同じものを着た覚平は大きな旗をまっすぐにたてて町々を歩きまわるのである。旗には墨痕淋漓ぼっこんりんりとこう書いてある。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
ただ、そこで目についた物は、たッた一本取り残されてあった看板柱で、一同がふと見上げると、裏をかえして掛け直したらしい板面に、墨痕淋漓ぼっこんりんりと書き流された達筆な文字。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
墨痕淋漓ぼっこんりんりとしたその真剣さはかえって彼女の胸に迫った。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)