二人は打連れて四谷左門町よつやさもんちようなる赤樫の家をでぬ。伝馬町通てんまちようどおりは両側の店にともしつらねて、だ宵なる景気なれど、秋としも覚えず夜寒のはなはだしければ、往来ゆききまれに、空は星あれどいと暗し。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)