唐紙たうし)” の例文
「ありましたよ。昨日賽錢箱を調べると、三兩の小判を唐紙たうしに包んだのが出て來ました。それがどうかしたでせうか、親分」
見れば白髯しらひげの老父は大きな鼈甲の眼鏡をかけて、次の間の書齋一面に廣げた唐紙たうしの上に、太い筆で大きな象形文字を書いて居られた。村の富豪から依頼されたのだと云ふ事である。
新帰朝者日記 拾遺 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
砂いくつ畳にひろふ起臥おきふしも早やすずしかり唐紙たうしのべしむ
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
眞物の唐紙たうしを使へる繪描きは江戸中に幾人もないと睨んで、御繪所の狩野家で訊いて、南宗北宗を兼ねをさめた名人岡谷半嶺と見當をつけたのさ——だがお前の骨折も無駄ではないよ
「これは、唐紙たうしぢやございませんか」