十市とおち)” の例文
天皇はこの頃、岩戸いわとの少卿大蔵種直の家を仮の御所としていた。人々の家も野や田の中に散在する始末であるから、さながら大和の十市とおちにいるような感じである。
十市とおちノ皇女といふ玉のやうな御子となつて実をむすんだか——といふ事のいきさつについても、恐らく鏡ノ王女は一ばん明るくない者の一人なのかも知れなかつた。
春泥:『白鳳』第一部 (新字旧仮名) / 神西清(著)
もはやそんなあやふやな身分の女性ではなくて、せいぜい内輪に見つもつたところで、彼女はすでに十市とおち女王ひめみこの母であつた。これは彼女が大海人によつて生んだ一人娘である。
鸚鵡:『白鳳』第二部 (新字旧仮名) / 神西清(著)