内衣嚢うちかくし)” の例文
やがて内衣嚢うちかくしから名刺入れを出して、その中の一枚を自分で来たという証拠しるしに折り曲げて、女の前の丸卓子テーブルの上に載せた。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
彼は心の中にわくわくするようないやな気分を持ちながらも、割合に落ち着いた挙止でそれだけの仕事をすませた。そして机の上にあった三通の手紙を洋服の内衣嚢うちかくしに大事にしまいこんだ。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
そして、何処から工面したものか、十三円の金を手づから俊吉の襯衣しやつ内衣嚢うちかくしに入れて呉れた。これが、父の最後の言葉で、又最後の慈悲であつた。今は再びこの父をこの世に見る事は出来ない。
雲は天才である (新字旧仮名) / 石川啄木(著)