男のことであるから割合に若々しく、墨染すみぞめ法衣ころも金襴きんらん袈裟けさを掛け、外陣の講座の上に顕はれたところは、佐久小県辺さくちひさがたあたりに多い世間的な僧侶に比べると、はるかに高尚な宗教生活を送つて来た人らしい。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)