そのすぐ向うからもう長々とした石段の入り口になって、そこには不許葷酒入山門くんしゅさんもんにいるをゆるさず六朝りくちょう風な字で彫った古いこけむした自然石が倒れ掛かっていた。
逗子物語 (新字新仮名) / 橘外男(著)
偶然と宿をでて足の向くところに任せてぶらぶらするうち、ついこの石磴せきとうの下に出た。しばらく不許葷酒入山門くんしゅさんもんにいるをゆるさずと云う石をでて立っていたが、急にうれしくなって、登り出したのである。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)