群集ぐんしゅう
大正七年八月十六日夜—— 私は神保町から須田町の方へ歩いて行った。両側の商店はもう殆んど凡てが戸を締めていた。大きな硝子戸や硝子窓の前には蓆を垂らしてる家が多かった、間には板を縦横に打ちつけてる家もあった。街路が妙に薄暗かった。黙々とした人 …