ぐわん)” の例文
これが、それ……お湯殿で御殺害なされた時に、木太刀でも一本あればと切歯はぎしりして仰しやつた……。そのため、木太刀をさし上げて、ぐわん
知多の野間で (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
殊に最後の一篇は嫉妬のおににならんと欲せる女、「こはありがたきおつげかな。わがぐわん成就じやうじゆとよろこび、其まま川へとび入りける」
案頭の書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
これで見ると、女には正直者が多いが、男には仏様の前でもペテンをり兼ねない手合てあひが少くないといふ事になる。ぐわんを掛けて願が叶ふ。
孫の生れるのを待ち設けて、おぐわん掛けをしてゐる母親の心根をいぢらしく思ふほど、彼れは自分の肉體の欲望の人並でないのを知つて居た。
仮面 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
太郎樣たらうさまへの朝參あさまゐりはかゝさんが代理だいりしてやれば御免ごめんこふむれとありしに、いゑ/\ねえさんの繁昌はんじようするやうにとわたしぐわんをかけたのなれば、まゐらねばまぬ
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
父は痰を病んでから、いつのまにか何かの神にぐわんを掛けて好きなものを断つことをちかつた。ただ、酒も飲まず煙草たばこも吸はぬ父は、つひに納豆なつとうを食ふことをめた。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
或年あるとしの住僧此塔の出たる時天を拝していのる、我法華ほつけ千部読経どくきやうぐわんあり、今一年にしてみてり、何とぞ命を今一年のばし玉へと念じて、かの塔を川中のふちなげこみたり。
このぐわんかならず叶ふやうと、百日のあひだ人にも知らさず、窟へ日參いたせしに、女夫の桂のしるしありて、ゆくへも知れぬ川水も、嬉しき逢瀬にながれ合ひ、今月今宵おん側近う
修禅寺物語 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
おたあちやんは、次の日から、湖の岸の水神様すゐじんさまのお宮へおぐわんをかけました。
虹の橋 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
明州みんしうひと柳氏りうしぢよあり。優艷いうえんにして閑麗かんれいなり。ぢよとしはじめて十六。フトやまひうれひ、關帝くわんていほこらいのりてあらずしてゆることをたり。よつて錦繍きんしうはたつくり、さらまうでてぐわんほどきをなす。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
またいにしへ六部等ろくぶら後世ごせ安樂あんらくぐわんかけて
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
今日初めて夏目さんにお目に懸りました。どんなお方か、一度お会ひ申したいと思つてゐたぐわんが届いて、お給仕までする事が出来ました。
或年あるとしの住僧此塔の出たる時天を拝していのる、我法華ほつけ千部読経どくきやうぐわんあり、今一年にしてみてり、何とぞ命を今一年のばし玉へと念じて、かの塔を川中のふちなげこみたり。
お住はもう一度去年よりは一層ぐわんにかけたやうに壻をとる話を勧め出した。それは一つには親戚には叱られ、世間にはかげ口をきかれるのを苦に病んでゐたせゐもあるのだつた。
一塊の土 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
店が忙しいために、その願ひもげられずに幾日か経つたが、其間にも片時もそれを忘れることは出来なかつた。上さんはぐわんをかけて仏にお礼参りを怠つてゐるやうなすまなさを感じた。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
わが「ぐわん」の通夜つやを思へば。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
美人を生ませて下さいと、ぐわんを籠めたところで、神様は滅多に承引しては下さらないが、醜女すべたはらませて下さいと頼むと、大抵はお引請ひきうけになる。
ぐわんの泉はとめたるか。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
忠朝は生きてゐるうちは、鉄の棒をりまはすほかには何の能も無かつた男に相違ないが、死んでからは面白い内職にありついてゐる。内職といふのは、禁酒のぐわんを聞くといふ事なのだ。
このにつなぐぐわんならし。
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
この日につなぐぐわんならし。
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)