ひそか)” の例文
爾思しかおもへる後の彼は、ひそかにかの両個ふたりの先に疑ひし如き可忌いまはしき罪人ならで、潔く愛の為に奔る者たらんを、いのるばかりにこひねがへり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
龐涓はうけんすでつかへ、惠王けいわう將軍しやうぐんるをて、みづか以爲おもらへく(一五)のう孫臏そんびんおよばずと、すなはひそかに((人ヲシテ))孫臏そんびんさしむ。ひんいたる。
欣弥のまなこひそかに始終恩人の姿に注げり。渠ははたして三年みとせの昔天神橋上月明げつめいのもとに、ひじりて壮語し、気を吐くことにじのごとくなりし女丈夫なるか。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
げに/\我等の教ふるところは汝詩人の目の視るところより低かるべしと曰ひつゝ、ひそかに我愚を笑ふなるべし。
そこで阿宝の室の鏡台はじめ什具じゅうぐの色合や名前を訊いてみると、すこしも違わなかった。阿宝はそのことを伝え聞いてますます駭くと共に、ひそかにその情の深いのに感じた。
阿宝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
昨夜も昨夜とて小児の如くに人を愚弄して、あらわに負けてひそかかえり討に逢わした昇に、不倶戴天ふぐたいてん讎敵あだ、生ながらその肉をくらわなければこの熱腸が冷されぬと怨みに思ッている昇に
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
されば貫一が鴫沢の家内に於ける境遇は、決して厄介者としてひそかうとまるる如き憂目うきめふにはあらざりき。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
これくに厚利こうりもつてせば、すなはひそか其言そのげんもちひてあらは其身そのみてん。これらざるからざるなり。ことみつもつり、るるをもつやぶる。
それぞ箕輪の骨牌会かるたかいに三百円の金剛石ダイアモンドひけらかせし男にあらずやと、貫一はひそか嘲笑あざわらへり。されど又余りにその人の意外なるにおどろきて、やがて又彼は自ら笑ひぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
孫臏そんびん(二〇)刑徒けいともつひそかせい使つかひく。せい使つかひもつし、ひそかせてともせいく。せいしやう田忌でんき(二一)よみしてこれ(二二)客待かくたいす。數〻しばしばせい諸公子しよこうし(二三)驅逐重射くちくちようせきす。