“陰影”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
かげ76.5%
いんえい12.9%
ニュアンス2.4%
あじ1.2%
いろあい1.2%
かげり1.2%
ものかげ1.2%
クマ1.2%
シルエット1.2%
ニユアンス1.2%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
私はその痛みの行衛ゆくえを探すかのように、片手で頭を押えたまま、黄色い光線と、黒い陰影かげ沈黙しじまを作っている部屋の中を見まわした。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
やや下ぶくれでくちびるが小さくいて出たような天女型の美貌びぼうだが、額にかざした腕の陰影いんえいが顔の上半をかげらせ大きな尻下しりさがりのが少し野獣やじゅうじみて光った。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
繊細な心理的陰影ニュアンスを捉へながら、自然に流露する微笑ましい機智を透して、しめやかな詩的感動を与へるのである。
仏国現代の劇作家 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
ようやく陰影あじが深まりまことの名人の境地に達してきた圓朝は、やや額が抜け上がり、四十四歳の男ざかり、別人のように落ち着きができてきていた。
円朝花火 (新字新仮名) / 正岡容(著)
概ね打明け話は恋愛の陰影いろあいを濃くするという例に二人の場合ももれなかったのだ。二人は結婚した。
俗臭 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
それが前方に薄れ消えるときに彼らは星を降りき、あるいは甘鯛あまだいが、えごのりの捲毛に戯れたりして、ときおり海草の葉がゆらめく陰影かげりの下には、大えびのみごとな装甲などが見られるのであるが
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
陰影ものかげのそこここに、やや強く光かぎりて
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
七段目のお軽などには、平右衛門とのめぐり合ひに、誰よりよいイソしさと、陰影クマなさの美しさを表した。
さながら十字架の陰影シルエット! しかしその次の瞬間には、宙に黒々とモンドリを打った。つづいてはげしい水音がした。滝壺の中へ飛び込んだらしい。しばらくはなんの物音もしない。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
彼等の世界には陰影ニユアンスがない、遞層グラデーシヨンがない。調和ハーモニーがない。交響シンフオニーがない。從つて又眞正の意味の戰鬪がない。彼等の世界には唯盲目なる動搖があるのみである。一切を包む夜があるのみである。
三太郎の日記 第一 (旧字旧仮名) / 阿部次郎(著)