陣取じんど)” の例文
二階の正面に陣取じんどって、舞台や天井てんじょう、土間、貴顕きけんのボックスと、ずっと見渡した時、吾着物の中で土臭つちくさからだ萎縮いしゅくするように感じた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
わたしたちの芝居小屋しばいごやはさっそくできあがった。四本の木になわをむすび回して、その長方形のまん中にわたしたちは陣取じんどったのである。
そんな場合ばあいには、こうあか帽子ぼうしかぶり、おつしろ帽子ぼうしかぶりましたが、一ぽうは、さくらみぎに、一ぽうさくらひだりにというふうに、陣取じんどりました。
学校の桜の木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
やしゃ子ねずみまで何万なんまんなん千という仲間なかまのこらずぞろぞろ、ぞろぞろ、まっくろになって、ねこ陣取じんどっている横町よこちょうはらかってめていきました。
猫の草紙 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
桜の木の下に花見客が陣取じんどっていて、其処そこには鍋に入れた汁もあり、鉢に入れた鱠もあるが、いずれも落花が降りかかっている、というのである。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
湯水ゆみずのように使ってぜいたくざんまいをしていましたが、尊像が山からお下りになるその日も、朝からジャンの御殿のおくに陣取じんどって、酒を飲んだり、おいしい物を食べたりして
かたわ者 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
両方の軍勢は川をはさんで向かい合いに陣取じんどりました、彦国夫玖命ひこくにぶくのみことは、敵に向かって
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
中央に広く陣取じんどってならんでいる管状かんじょう小花は、その平坦へいたん花托面かたくめんおおめ、下に下位子房かいしぼうそなえ、花冠かかんは管状をなして、その口五れつし、そして管状内には集葯しゅうやく的に連合した五雄蕊ゆうずいがあり
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
近所の邦人ほうじんの方々が、張り切って、自家用車で、練習場まで、送って下さるやら、スタンドに陣取じんどって声援せいえんして下さるやら、それよりもさわいでくれたのが、となり近所のメリケン・ボオイズ
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
やがて書記の川村がどうかお着席をと云うから、柱があってりかかるのに都合のいい所へすわった。海屋の懸物の前にたぬき羽織はおりはかまで着席すると、左に赤シャツが同じく羽織袴で陣取じんどった。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ちょうど私の真向うに陣取じんどった例の蝗は少しもおどろかなかった。
蝗の大旅行 (新字新仮名) / 佐藤春夫(著)
マチアとわたしは荷馬車の中に陣取じんどった。