邁進まいしん)” の例文
きのうまでの僕とは、ちがうのだ。自信をもっ邁進まいしんしよう。一日いちにち労苦ろうくは、一日いちにちにてれり。きょうは、なんだか、そんな気持だ。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
ひとから頼まれて男より邁進まいしんする場合もあった。しかしそれは眼前に手で触れられるだけの明瞭めいりょうな或物をつらまえた時に限っていた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
而して燕王の豪傑の心を所以ゆえんのもの、実に王のの勇往邁進まいしん艱危かんきを冒してあえて避けざるの雄風ゆうふうにあらずんばあらざる也。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
けっして誤ることのないのは何事もなさない者ばかりである。生きたる真理のほうへ邁進まいしんする誤謬ごびゅうは、死んだ真理よりもいっそう豊饒ほうじょうである。
文壇ぶんだん論陣ろんぢん今やけい亂雜らんざつ小にながれて、あくまでも所信しよしん邁進まいしんするどう々たる論客きやくなきをおもふ時、泡鳴ほうめいさんのさうした追憶ついおくわたしにはふかい懷しさである。
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
かえって日本においてより外国での方が名声は嘖々さくさくとしている。進取邁進まいしんした彼女のあとにつづいたものは一人もない。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
今にもんで巻きつかれるのだと観念し、絶望の勇気を振うて死物狂しにものぐるい邁進まいしんしたが、到頭直接接触の経験だけは免れた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
故に本来の人間性に矛盾した功利主義の排除こそ、はじめて子供たちをして正義に邁進まいしんし、高邁な人たらしめる素地をつくることができるのである。
日本的童話の提唱 (新字新仮名) / 小川未明(著)
古往今来、あらゆる英雄豪傑は皆、えらい者になろうと志を立ててから、その志に向って勇往邁進まいしんしたに相違ない。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
必死の兵六百余人がいのちを振りかざして、一角の突破に邁進まいしんして来れば、その約四倍はある光忠の軍といえど、水も漏らさぬ包囲はなかなか保し難い。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とにかく一意直往邁進まいしんすべきである。ひとよりいい商品を安く売ることだ。こうすれば金は自然にもうかる。金はもうからないのではなく、人がもうけないのだ。
自分らは先生を押し立て、先生を守って、神の国建設の事業に邁進まいしんするのだ。先生、これからです。今、殺されるなどということをお考えになってはいけません。
私どもは永遠の不朽の生命を深く信ずることによって、あくまでわれらに課せられた世界的使命たる、平和な文化国家の創造のために邁進まいしんしたいと思うのであります。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
親類を怒らせ、父母を泣かせて君が決然として哲学の門に邁進まいしんしたとき、私の心は勇ましく躍り立った。月日の立つのは早いものだ。君が向陵こうりょうの人となってから、小一年になるではないか。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
諸君はこの新時代の新人として世に立つべく、大いに勇往邁進まいしんすべきである。
新子は、美沢と交際つきあってから一年以上になるが、その間に美沢の欠点も美点も、すっかりのみ込んでいた。美沢が芸術至上で、自分の芸の完成にどんどん邁進まいしんして行くところは好きだった。
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
かかる力に駆られて邁進まいしんするジャン・クリストフは、ついにいかなる境地にたどりつくであろうか。フランス国外に逃亡した彼は、スイスにおいて、自分の恩人の妻と不思議な恋におちいった。
未来の世界的王国の建設に向かって邁進まいしんするローマの軍隊にすぎません。
わざとから気合いを一つ投げて、直後! 泰軒めがけて邁進まいしんすると同時に
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
この超速航空機の設計については、五十嵐博士でなくては処理し得ない部分が非常に多かったが、それにも拘らず、学者達は万難を排して、五十嵐博士の遺業の完成に邁進まいしんすることを誓い合った。
偉大なる夢 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
写生々々と技を練るに従って、その技も心と共に向上してゆくものであることを思えば、俳句を作るはただ写生という一路に邁進まいしんすればよい。何物にもとらわれることなく唯一途いちずに写生に邁進すればよい。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
笑われるといやだから、というよりは、なんだかもうこれからは、兄さんにあまり頼らず、すべて僕の直感で、独往邁進まいしんしたくなっていたのだ。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
ただ、吉水を仆せばよいのだ。吉水を仆せば、岡崎などは、そのついでに自滅する。もうくだらぬ暇つぶしはやめて、目的へ邁進まいしんすることこそ肝要である
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これは一言にして云えば、民族ことごとくが振るいたって、一つの目的に向かって邁進まいしんしなければ到底駄目である。
現下に於ける童話の使命 (新字新仮名) / 小川未明(著)
第一にあなたがたは自分の個性が発展できるような場所に尻を落ちつけべく、自分とぴたりと合った仕事を発見するまで邁進まいしんしなければ一生の不幸であると。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私どもは和衷協同の精神をもって、互いに愛しあい、いたわりあい、助け合って、すみやかにわが民族の理想である、平和な、文化国家の創造に邁進まいしんすべきであります。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
自ら土に親しんで実生活に邁進まいしんされるのはまことに頼もしい限りです。
青春の道にれている毒の木の実、一度その甘き毒に触れ、飽くなき歓楽の陶酔に溺れてしまった春日新九郎は、あれ程までに邁進まいしんして来た大願も、千浪が真心も
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
家庭の平和も大切ではあるが、理想に邁進まいしんしている男子にとっては、もっともっと外部に対しても強くならなければならぬ。きょう、学校へ行って、つくづくその事を痛感した。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
そうしてその緊張の極度はどこかで破裂するにきまっていた。破裂すれば、自分で自分の見識をぶちこわすのと同じ結果におちいるのは明暸であった。不幸な彼女はこの矛盾に気がつかずに邁進まいしんした。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
新九郎は初めて名師に会った感謝にち、修行の一道に邁進まいしんしたが、何せよ格式の高い将軍家の指南道場、新九郎のような末輩は、時たま試合の陪観ばいかんを許されるの他
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのかわり理想とするところへは独往邁進まいしん、着々と無言で進んでいる巨歩のあとがうかがえる。そのもっとも偉なのは、上洛じょうらく朝拝の臣礼を、彼のみは怠らずにいることである。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
謙信はすでに、迷いなく、ここへ邁進まいしんして来つつあるのに信玄は、事態の直前に、味方の布陣をえなければならないという必要に——つまり後手ごてに立たされてしまったのである。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わが大蜀の軍備はただその目的のために邁進まいしんして来たものといっても過言ではない。朕、いま傾国の兵をあげ、昔日の盟を果たさんことを、あえて関羽の霊に告ぐ。汝ら、それを努めよ
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)