うた)” の例文
この日頃、またしても人々は、私のうたを否定する。彼らはそれを切りさいなむ。それらの勝手な組合せで、彼らは私を否定する。
駱駝の瘤にまたがつて (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
「負ける筈はないんだが、奴等のうたに聞き惚れたばかりで、見事に脚を掬はれてしまつたのさ……然し、泥棒連には惜しい声の持主だな。」
武者窓日記 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
懇ろに宝石の韻をちりばめた、純金属の格子細工のやうに、みがきあげたわたくしのうたで、おんみの御頭おつむりの為に、大宝冠を造るでござりませう。
その後三十年、思へば「私の青春は嵐に過ぎなかつた、時々其処此処に陽の光のちらついた」、うたさながらではなかつたか。
かくして一旦失はれたるうたの旋律は、再度また此所に歸つて來た。しかしながらこの旋律は、かつて原始に在つたそれと全く性質を別にする。
青猫 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
見張りの衛兵は、春の日永ひながを、あくびしていたが、ふと幽楼ゆうろうの上から、哀しげなうたの声が聞えてきたので、聞くともなく耳を澄ましていると
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
龍造寺主計は、かたなのつまびきをつづけながら、また口をひらいた。こんどもうたかと思うと、今度は、ことばであった。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
近頃北京ペキンから田舎まで、妙なうた流行はやっているでしょう。あの詩の意味を知っていて? 『古木天を侵して日已に沈む』こう真っ先にあるでしょう。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
七十郎は肩をすくめた、「冗談でしょう、貴方をへこませるかどうか、貴方のうたをひきたてるために、私がへたな琴を弾いたことはわかっている筈です」
詩人はそのやさしい腕をむねにくんで赤い唇を開いてうたいました、それは即興の美くしいやさしい詩でした。
無題(一) (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
お望みなら「文章博士」にだってなります。ただ、うただけは作らせて下さい。「文章博士」が経書の文句の暗誦あんしょうをするだけなら、あんなものだれだってなれます。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
うたのみぞひとり自由なりける、天は彼より一切を徴して、代ふるに最も自由なるものを以て授く、彼亦聊か安んずるところなかる可らず、彼は終始常陸の僻邑に蟄居して
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
無論かうした自然の生命力や美しさは、既にあらゆる詩人が、芸術家がうたひ尽してゐることであるが、しかし今また自分が心から驚嘆したとていささかも不思議はないのだ。
続重病室日誌 (新字旧仮名) / 北条民雄(著)
鋭どく明るくうたのごとく、また一人の勇者を送る莊嚴の獨唱ソロのごとく
展望 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
コノール 詩人どものうた主旨こころはどんなものであろうか?
ウスナの家 (新字新仮名) / フィオナ・マクラウド(著)
二行のうたで返したという名高い話があるそうな。
紫大納言 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
海原のうたに浴しつゝ緑なす瑠璃をくらひ行けば
詩語としての日本語 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
あやしくもたへなりいにし世のうたはも
閉戸閑詠 (新字旧仮名) / 河上肇(著)
うた枯れて雲搏つしろき秋の鶏
天の狼 (新字旧仮名) / 富沢赤黄男(著)
さらばとうたの神を追ひ
砂上の低唱 (新字旧仮名) / 漢那浪笛(著)
足をもがいてうたならず
枯草 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
昨夜よべうたね足らぬ
文月のひと日 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
うたの胸守りつつ
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
年越のうた
鮪に鰯 (新字新仮名) / 山之口貘(著)
時に、有明ありあけのそらける夜鳥の声か。あるいは山家の牧童でも歌っていたのか、ふと古調ゆかしい一篇のうた月魄つきしろのどこからともなく聞えていた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それはさうと先生方、そんな物騒な話は預りとして、御気嫌の好いところで、いつものうたでも聞かせてて下さいませんかね。その先生の凄い眼つきを
武者窓日記 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
こういう奇怪の殺人が、頻々と行われるそのうちに、北京童ペキンわらべの口からして次のようなうたがうたわれるようになった。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そこに生ずる悲哀よりも歓喜よりも、何よりもそこに存する真実のうたをこそ尊ぶべきだ、と僕は思う。……清原、恋をしたまえ。一切を捨てて恋にいたまえ。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
その凡そだ、うたを退屈にするのは。その凡そを持たないためには一心不乱に生きるばかりの人である必要がある。——ヴ※ルレエヌには自分のことは何にも分らなかつた。
小詩論:小林秀雄に (新字旧仮名) / 中原中也(著)
ああこの日頃、またしても人々は、私のうたを否定する。彼らはそれを切りさいなむ。それらの勝手な組合せで、彼らは私を否定する。ああその批評で、彼らはつひに何人の耳を掩はうとするのか。
駱駝の瘤にまたがつて (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
これは「歌ふためのうた」なのである。
氷島 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
と言つた君の最後のうた
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
乙女おとめの琵琶はすでにげんをかき鳴らし、その紅唇からもれるうたの哀調に一座は水を打ったようにひそまりかえった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この時、往来の遙か向こうから、酒に酔っているらしい男の声で、うたを唄うのが聞こえて来た。しかもその声は近づくに従って詩の文句がややはっきりと聞き取れた
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
真実のうたとはそこに生れるのだ。その虚無の場を不安と観ずるべからず、法悦ほうえつの境と信ずべし、だ。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
私は、脚を卓子の上に重ねて、椅子の背に頭を載せかけたまゝ「海賊」のうたをうたつてゐた。
ゾイラス (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
片意地な兜蟲 か弱い仔雀 跛この驢馬 憐れなるわがうたの一卷
山果集に寄す (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
私はうたはこの皺に因るものと思つてゐる。
小詩論:小林秀雄に (新字旧仮名) / 中原中也(著)
ひとり居てダビテのうたをうたひなむ
神に捧ぐる歌 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
彼らにも本来の情涙じょうるいはあったのだ。また親があり情婦があり子がありいろんなきずなもあったのだ。それへの何かに触れるいとうたとについ真情が流れ出てしまったものだろう。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼等は凡て羊の皮に焼火箸で書いた自己の「創作集」を肌身離さず背嚢の中に蔵して、敗戦のテントの中では戦友同志に読み合せて慰め、祝勝の宴の上では、節を編んでうたにうたつた。
浪曼的月評 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
願くば かくてあれかし わがうたの境
扁舟 (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
あまり一撃のもとに何時いつものやうに奴等を降参させてしまふのも呆気なさ過ぎるから、先づ遠くからうたを歌つて、程よく奴等の魂を眠らせてやつた後に、引導を渡してやらうぢやないか
武者窓日記 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
友よ われら二十年もうたを書いて
一点鐘 (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
その私のうたを耳にすると、身の毛もよだつと云ふのであつた。
酒盗人 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
己がうたをみづからうたへ
駱駝の瘤にまたがつて (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
愛国のうたをつくりたきものよ! などゝ念じて居ります。
私の万年筆 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
昨日の私のうたのやうに
一点鐘 (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
親父は毎日うたを書いた
一点鐘 (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
私のうた
艸千里 (旧字旧仮名) / 三好達治(著)