おか)” の例文
なでて見るとおかしな手障てざわりだから財布の中へ手を入れて引出して見ると、封金ふうきんで百両有りましたからびっくりして橋のたもとまで追駆おっかけて参り
文七元結 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
なるほど、どうも様子がおかしいと思ったら、盲人であったか、道理こそさいぜんから口だけ親切で、身体に気を許さないのがわかった。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それ故商人に有勝ちな急用で、旅行云々などとは受取れぬ話である。殊に規律の正しい伯父が、旅行先を明記しないのもおかしい。
P丘の殺人事件 (新字新仮名) / 松本泰(著)
(——清水茂は異常な恐怖におそわれているらしく顔色を蒼白に変えながら語った)……はて、これはおかしなことがあるものだ。
象牙の牌 (新字新仮名) / 渡辺温(著)
と。かかる滑稽こっけいな事を聞いた私は我知らず吹き出して大いに笑いましたが、かの主僧はその大笑におかしな顔をして居りました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
いまになってみると、どうしてあんな女にれこんだかわけがわからねえ、正直のところ自分で自分がおかしいくらいなんだ。
そうしたら伯母さんが怪訝けげんな顔をして、「それはおかしい。チーちゃんというのは私の家の娘ではありません。あの子の真実ほんとうの妹でございますよ」
そうして腕を組み直しながら、今一度よく考え直してみましたが、そのうちに私は又、とてもおかしい……噴飯ふきだしたいくらい変テコな事実に気が付いたのです。
死後の恋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それから、もう一つおかしいことがある。この前の二人は、余程の浜村屋贔屓とみえて、髪は路考髷に結い、路考茶の着物を着、帯は路考むすびにしていたそうだ。
平賀源内捕物帳:萩寺の女 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
第一、あんな恰好かっこうをして都中をほっつき歩いていることからして、おかしいとは思わないかい? いくら人目を避ける変装だからと云ったって、あれは少々極端だ。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
こいつはおかしいぞ! それにこの手紙の書きぶりは、罪を犯した人間の書きぶりとはまるで違う。
(新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
もしあれが続いていたら、自分でいうのもおかしいが、世界に出しても恥しくなくまた一面日本の誇りにもなるものが出来たろうと、今でも腕をして残念に思っている次第である。
どうして、と綱雄は目を送れば、なにね、何でもありませんけれどね、あのー、あのー、ただなんだかおかしいの。だから私は好かないと思っていますの。と目顔に言わする心の中。
書記官 (新字新仮名) / 川上眉山(著)
おかしな陽気だと思って居りましたよ、旦那、やっぱり風が出て来ましたね、と云うハンドルを握った運転手の声に、それ迄ウツラウツラ居眠って居た私ははっと気付いて窓の外を眺めますと
陳情書 (新字新仮名) / 西尾正(著)
「おや、おかしな事を言うね、私が綾吉を殺したとでも——」
「眼の下ヘポツリとおかしな腫物が出来て、その腫物が段々腫れ上がってくると、紫色に少し赤味がかって、爛れて膿がジクジク出ます、眼は一方は腫れ塞がって、その顔のいやな事というものは何ともいいようが無い」
村の入口には眼になれた田舎酒屋の看板と申すもおかしいが、兎に角酒屋の目印となっておりまする杉の葉を丸く束ねたのが出ています。
「かの荷物は天和堂テンホータンで荷造りをして居る時は薬舗やくほへ預けて置くような風であったが今日きょう運んで行くところを見るとおかしい」
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「そうなの、わたしもおかしいと思った、絵描きだ、絵描きだ、といって、ちっとも絵を描かないじゃありませんか」
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
生前せいぜん原稿を毎日書いていた位の男が、死ぬと急に原稿が何であるかということを知らなかったのはどうもおかしい。
「そうなの、家の母さんは此五六日ほんとに様子がおかしいのよ。貴郎はそれに気がお付きになって?」
P丘の殺人事件 (新字新仮名) / 松本泰(著)
焼いたパンの中から鼻が飛び出したなどというのもおかしいし、当のイワン・ヤーコウレヴィッチはいったいどうしたのだろう?……いや、わたしにはどうもわからない
(新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
……どうしてって素振そぶりが第一おかしいじゃないか。生娘きむすめの癖に、亭主持ちの真似をして、一年近くも物凄い廃屋あばらやに納まっているなんてナカナカ義理や物好きでは出来るものじゃないよ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
と聞いて内証ではうも様子がおかしい、知ってる人だから朝勘定でもいんだが、金の遣振りが訝しいから宵勘定に下げて貰え。
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
しかも一時間も前に同じ汽車でこの土地に着いていながら、今迄何処どこにいたものであろう。そして最もおかしいのはグヰンの服装が停車場で見た時とちがっていた事である。
緑衣の女 (新字新仮名) / 松本泰(著)
それはなるべくそういうことをしないように警護けいごの僧を付けてある。ところがその警護の僧がおかしい。自分が見張みはりをして居りながらなるべくそれを取らせるようにする。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
そうして朝から晩まで、食事の時でも膝をはなさないで大切だいじがっているのがおかしいほどである。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それは、これから説明しますが、おやおやと私がおかしく思っているうちに、その浮標は、ずんずんと海中に沈んでいったんです。(あっ、潜水艦だ!)と気がついたときには、もうあとの祭です。
人造人間エフ氏 (新字新仮名) / 海野十三(著)
新「なんだね、見捨てるの見捨てないのと、昨夜ゆうべ初めて松戸へ泊ったばかりで、見捨てるも何も無いじゃアないか、おかしく疑るね」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
お君はこの米友を忘れてしまったのか、あんな仲間へ入っているうちに気象きしょうが変って、俺らのことなんぞはどうでもいいことにしてしまったんじゃあるまいか、どうもおかしい。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「だって先生、科学的には非常に信用が置けるし、言うことも普通であるし、友誼ゆうぎ潔癖けっぺきであるほど厚いし、ことに細君のことなど潔癖で、細君が死んでから他の女には絶対に接しなかったという程の人格者としてはおかしいですが」
とんと手前てまい商いのことは知りません、家来がやると申すので始めましたのだけれども、やすう売るのを咎めるのはおかしいように心得ます
唄が少々疲れてきたのと、四天王の祈りがばかに景気よくなって、無暗に珠数じゅず押揉おしもむ形が、珠数を揉むよりも、芋を揉むような形に見え出したのだから、道庵がおかしいと見ました。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
平「ヘエ……おい、お前わしが迷惑するよ、冗談じゃアない、困るよ、うに金は届いてるとこへ又百両持って来るてえのはおかしいじゃアないか」
文七元結 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
能登守の家中に左様な者があるとはおかしいとあって、今こちらへ調べにおいでなさるところなんでございます、それにつかまって御覧ごろうじろ、退引のっぴきがなりません、それを聞き込んだから
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
永「七兵衞さん、先刻さっきお前、わしにおつう云掛いいかけたが、お前はお梅はんと私とおかしな事でも有ると思ってうたぐって居やアせぬか」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それにしても二人の役人ぶりが少しおかしいと思いました。仮りにも一カ寺に手を入れるのに、もとより確たる証拠は握っているだろうが、夜陰こうして踏み込むのはあまりに荒っぽい。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
駕「いゝったって今明けてお這入んなすった様だった、女中がネ、うでないのですか、なんだかおかしいな、じゃアこうよ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
かどわかされたんだよ、連れて行ったのは、さきほどお寺を見に来た旅の大工だといったあの人に違いない、それだから茂ちゃんが隠れたのだ、わたしもおかしいとは思いました、訝しいとは思ったけれど
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
繼「そうして斯う男と女と二人で一緒に寝ますと、肌をふれると云って仮令たとえおかしな事は無くっても、訝しい事が有るとおんなじでございますとねえ」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「ほんとに、わたしもおかしいと思いましたから、もし何かの見損ないではないかと、あとで外へ出て近所の人に尋ねてみますと、いよいよ米友さんに違いないようでございますから、どうも合点がゆきませんの」
位牌班ゐはいまだらといふので名が一たいおかしうございます、わたしもモウ明日みやうにちやくに立てばうございますが、今晩こんばんにもヒヨツと生者必滅しやうじやひつめつでございますから……。
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「そりゃおかしいぞ」
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
晋「ハヽヽヽいよ/\おかしいよ、お若はこゝにいるじゃないか、殊に二十年来の病気で外出したことのないものがお前のうちくわけがないよ」
主人のさいは長二郎に女房の世話を致したいと申して居りましたから、わたくしの考えますには、其の事を長二郎に話しましたのを長二郎がおかしくさとって
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
三「コレ/\甚藏、きさまが云うと己が殺して死骸を引取って、葬りでもした様にうたぐって、おかしくそんな事を云うのか」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
下女のおますがおかしな譫言うわことを云い、幽霊に頼まれて百両の金を貰い、是迄の身代に取付いたの、萩原新三郎様を殺したの、海音如来のお守を盗み出し
おかしな事を云いなさるぜ、おめえさんはこんな事が度々ありましたか、わっちア骨の折れる程嚊をたれたのは初めだ、おめえさんは森松さんか何か知らねえが
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
永「これわし一箇寺いっかじの住職の身の上、納所坊主とは違うぞえ、それはおはんがお梅さんと私がおかしいと云うては、夫ある身で此の儘には捨置かれんが」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
孝「何も疑ぐりはしませんのに、疑ぐると思うのが余程よっぽどおかしい、夜夜中女ばかりの処へ男が這入り込むのはうもおかしいと思ってもかろうと思います」