芝原しばはら)” の例文
ふ寶澤こたへて我は徳川無名丸むめいまると申す者なり繼母けいぼ讒言ざんげんにより斯は獨旅ひとりたびを致す者なり又其もとは何人にやとたづかへせば彼者かのもの芝原しばはらへ手を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
その年夏のさかりに毎夜まるうち芝原しばはらへいろいろ異様な風をした人が集って来て、加持祈祷かじきとうをするのを、市中の者がぞろぞろ見物に出かけた。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
野球ボール其樣そん災難さいなんいから、毎日まいにち/\さかんなものだ、丁度ちやうど海岸かいがんいへから一ちやうほどはなれて、不思議ふしぎほど平坦たいらか芝原しばはらの「ゲラウンド」があるので
そこは林の中なれど少しく芝原しばはらあるところなり。藤七はにこにことしてその芝原をゆびさし、ここで相撲すもうを取らぬかという。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
月待草に朝露しとど湿った、浜の芝原しばはらを無邪気な子どもを相手に遊んでおれば、人生のことも思う機会がない。
紅黄録 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
そしてポウセ童子は、白い貝殻かいがらの沓をはき、二人は連れだって空の銀の芝原しばはらを仲よく歌いながら行きました。
双子の星 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
何処どこかへ夜連出して、ひどい様だがわっち一人ではいけねえ、ぎゃア/\云わねえ様に猿轡さるぐつわでもめて、庄吉と二人で葉広山はびろやまかついで行って、芝原しばはらの綺麗な人のねえ処で、さて姉さん
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
紫野むらさきの芝原しばはらには、野天小屋のでんこやがけの見世物みせもの散在さんざいしていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その内に汽車は水戸に到着、停車場ステーション前の太平旅館に荷物を投込み、直ちに水戸公園を見物する。芝原しばはら広く、梅樹ばいじゅ雅趣を帯びて、春はさこそと思われる。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
一むらのすすきのかげから、嘉十かじふはちよつとかほをだして、びつくりしてまたひつめました。六ぴきばかりの鹿しかが、さつきの芝原しばはらを、ぐるぐるぐるぐるになつてまはつてゐるのでした。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
七つの小流れと十の芝原しばはらとを過ぎました。
双子の星 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)