老木ろうぼく)” の例文
るとそのあたり老木ろうぼくがぎっしりしげっている、ごくごくさびしい深山しんざんで、そして不思議ふしぎ山彦こだまのよくひびところでございました。
幾抱いくかかえあるかわからないような老木ろうぼくだ。まるで、青羅紗あおラシャふくでもきているように、一面にあつぼったいこけがついていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
尾花に残る日影ひかげは消え、蒼々そうそうと暮れ行く空に山々の影も没して了うた。余はなお窓に凭って眺める。突然白いものが目の前にひらめく。はっと思って見れば、老木ろうぼくこずえである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
さらに、事実じじつげると、先日せんじつのこと、おとこは、かきのにとまった、すずめをねらっていました。このをまぬかれた老木ろうぼくで、えだり、すずめなどのいいあそ場所ばしょでした。
春はよみがえる (新字新仮名) / 小川未明(著)
かくのごとき人の心には余裕がある。すなわち生木なまきのようなる弾力だんりょくがあって、世の変遷へんせんとともに進む能力を保留している。「老木ろうぼくまがらぬ」とは邪道じゃどうに迷わぬの意より弾力なきを笑うの言である。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
年齢としをとるのは妖精ようせい人間にんげん同一どういつじゃ。老木ろうぼくせいは、かたちちいさくとも、矢張やは老人ろうじん姿すがたをしてる……。』
むしろそれへ足を乗せた卜斎ぼくさいのほうで、まさか、やわらかい石だとは、ゆめにも思わなかったはずみから、よろよろとツンのめって、あやうく、向こうのうめ老木ろうぼくに頭をぶつけ、ふたたび
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
きしはどこもかしこもみなったようないわで、それにまつすぎその老木ろうぼくが、大蛇だいじゃのようにさがっているところは、風情ふぜいいというよりか、むしろものすごかんぜられました。