“糸(し)” の例文
旧字:絲
と見れば、蛇形の列は忽然(こつねん)と二つに折れ、まえとは打ってかわって一糸(し)みだれず、扇形(おうぎがた)になってジリジリと野武士の隊伍(たいご)を遠巻きに抱いてきた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
頭髪(かみ)を振(ふ)り乱(みだ)しているもの、身(み)に一糸(し)を纏(まと)わない裸体(はだか)のもの、血(ち)みどろに傷(きずつ)いて居(い)るもの……ただの一人(ひとり)として満足(まんぞく)の姿(すがた)をしたものは居(お)りませぬ。
建文三年二月、燕王自ら文を撰(せん)し、流涕(りゅうてい)して陣亡の将士張玉等を祭り、服するところの袍(ほう)を脱して之(これ)を焚(や)き、以て亡者(ぼうしゃ)に衣(き)するの意をあらわし、曰く、其(そ)れ一糸(し)と雖(いえど)もや、以て余が心を識(し)れと。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
一糸(し)紊(みだ)れない態度だったし、短時間のうちに引揚げて行った行動の迅速さに、能登守の家臣たちは、思わず
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
孔明は素輿(そよ)(白木の輿)に乗って陣中を見まわり、常のごとく、黄巾(こうきん)をいただき白羽扇(びゃくうせん)を持ち、その出入を見るや、衆軍みな敬して、進止(しんし)軍礼、一糸(し)のみだれも見ることができません、……実に
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
暗憺(あんたん)たる闇いくさ、ただものすごい太刀音と、槍(やり)の折れる音や人のうめきがあったのみで、敵味方の見定(みさだ)めもつかなかったが、勝負は瞬間に決したと見えて、前の蛇形陣(だぎょうじん)は、ふたたび一糸(し)みだれず
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かれは一糸(し)とりみだすさまもなく、観念の眼をふさいでいる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)