むなしゅ)” の例文
その上に天下の人気を背負って立って、一世をむなしゅうする大文豪であるかのように歌いはやされていたから、当時の文学少女の愛慕の中心となっていた。
美妙斎美妙 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
ましてや謙遜な二葉亭は文章の造詣ぞうけいでは遥に春廼舎に及ばないのを認めていたから、おのれをむなしゅうして春廼舎の加筆を仰いだ。春廼舎臭くなったのも止むを得なかった。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
この忠告を受けた時の二葉亭の胸中万斛ばんこくの遺憾苦悶は想像するに余りがある。折角ここまで踏出しながら、何にもしないで手をむなしゅうしてオメオメとどうして帰られよう。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)