短冊形たんざくがた)” の例文
旧字:短册形
又ほかに、短冊形たんざくがたの金革に姓名と名乗を書いて、後襷うしろだすきに縫いつけていた者があるし、辞世の和歌とか俳句とかをしるしている者もある。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「細かい字で書けるだけ一面に書いて下さい。あとから六字ずつを短冊形たんざくがたってかんの中へ散らしにして入れるんですから」
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
半紙を短冊形たんざくがたに切って、それに「千早振ちはやぶ卯月うづき八日は吉日よ、さきがけ虫を成敗ぞする。」
桜林 (新字新仮名) / 小山清(著)
南の裏庭広く、物置きや板倉がたて母屋おもやに続いて、短冊形たんざくがたに長めななりだ。
春の潮 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
短冊形たんざくがたに切った朱唐紙とうしの小片の一端から前歯で約数平方ミリメートルぐらいの面積の細片を噛み切り、それを舌の尖端に載っけたのを、右の拇指のつめの上端に近い部分に移し取っておいて
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
田植時たうえどきも近いので、の田も生温なまぬるい水満々とたたえ、短冊形たんざくがたの苗代は緑の嫩葉わかば勢揃せいぞろい美しく、一寸其上にころげて見たい様だ。どろ楽人がくじん蛙の歌が両耳にあふれる。甲州街道を北へ突切つっきって行く。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
人参をく薄く短冊形たんざくがたって酢と味淋みりんと砂糖と塩でよく煮たのです。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
小楊枝入こようじいれを取り扱うような手つきで、短冊形たんざくがたの薄い象牙札を振り出しては、箱の大きさと釣り合うようにできた文句入もんくいり折手本おりでほんりひろげて見た。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
麦の穂は一面白金色はくきんしょくに光り、かわず鳴く田は紫雲英れんげそうくれないを敷き、短冊形たんざくがた苗代なわしろには最早嫩緑どんりょくはりがぽつ/\芽ぐんで居る。夕雲雀ゆうひばりが鳴く。日の入る甲州の山の方からちりのまじらぬ風がソヨ/\顔を吹く。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)