かみ)” の例文
大臣は大和やまと葛城かつらぎ山から呼んだ上手じょうずな評判のある修験者にこの晩はかみ加持かじをさせようとしていた。祈祷きとう読経どきょうの声も騒がしく病室へはいって来た。
源氏物語:36 柏木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
次に六角右兵衛かみ義郷よしさとも、一時危いところであった。それはどう云う訳かと云うと、義郷の家臣に、近江の国信楽しがらきの住人多羅尾道賀と云う者がある。
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
公卿では花山院師賢もろかた、あぜちの大納言公敏きんとし、北畠具行ともゆき、侍従の公明、別当実世さねよ烏丸からすま成輔なりすけ、さえもんのかみ為明ためあき、左中将行房、ちぐさ忠顕ただあき、少将能定よしさだ
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが、あたくしは随処ずいしょに、底に秘めた鋭いものを感じる。柏木右衛門かみが、源氏の君の、見るとしもない一瞥いちべつを、心の底にまで感じて神経衰弱になって死んでしまう気の咎め——
果してそれは公任卿の意にかなって、中納言左衛門かみめんことを請うの状はおおやけに奉呈され、匡衡は少くとも公任卿には斉名以言よりも文威の高いものと認められて面目を施した。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
右正三位、行権中納言、兼右衛門かみ、藤原朝臣隆衡宣。奉勅。件の人は。二月二十八日事につみして。かの国に配流。しかるをおもうところあるによりて。ことにめしかえさしむ。
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
と言って深くかみの悲しむ様子を見ていては、小侍従も堪えきれずなって泣きだすと、その人もまた泣く。
源氏物語:36 柏木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
このほど検校けんぎょうのみゆるしを賜わった盲法師で、そのおん礼のため、左兵衛さひょうえかみ(尊氏)さまにともなわれて、今日、春の宮(東宮)へも伺うたよしを聞いております。
宮のお袖を引いてかみのこう言った時、宮のお心はいよいよ帰って行きそうな様子に楽になって
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
誤解という、いわれなき魔、形なき魔のするわざです。左兵衛さひょうえかみさま。およばぬながらも、この正成がおもてをおかして、そのことにつき、宮へはご諫言かんげんをこころみまする。
今年にはいってからは起き上がることもあまりできない衛門督であったから、大官の親友を病室に招くことが遠慮されて恋しく思いながら逢えないことを思うと残念で、かみ
源氏物語:36 柏木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
尊氏が三位の参議、左兵衛さひょうえかみであるにたいし、正成はじゅ五位河内守たるにすぎない。
「左兵衛ノかみ直義です。今朝来こんちょうらい、おまち申しあげておりました。兄尊氏もいずれごあいさつにまかり出でましょうが、ひとまず、花山院の御旧居へ、直義、ご案内つかまつりまする」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その「新千載集」には、左兵衛さひょうえかみ直義と、名もれいれいしく、こう見える。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
正三位左兵衛さひょうえかみじょされ、八座の宰相さいしょう(参議)の御一人にも挙げられ、殿上人てんじょうびとの列にも列せられてみると、置文のお誓いなど、自然お心からうすらいでしまうのは、人情自然かともぞんじますが
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「腹掻き切って、左兵衛さひょうえかみ(兄尊氏)どのへお詫びせん」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「都へ出たまま、久しく帰国もしませんでしたが、以前とは、比較にならぬ程、荘園も拡まり、家人郎党も殖え、このお館など、見違えるばかり華麗になりましたな。これ程な生活くらしは、都でも大臣かかみぐらいの地位でないと出来ません」
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)