目配めくば)” の例文
振り向いてみると、二人の眼は目配めくばせをし合っていたが、すぐに素知らぬふうをした。——ジャックリーヌはその発見に心転倒した。
目配めくばせをして、自分は先に、ヒラリとおかへ身を交わすと、残された配下の者が、いちどにかぶって、弦之丞とお綱の手をねじあげ——
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
妻の伯父グスタアフ・レンゲルホオヘル氏は小生の平素敬愛し居る人に候へども、初めて我子を見せし時、異様なる面持にて小生に目配めくばせ致し候。
博士は庸三に気を兼ねるように、むしろ話のはずむ彼女に目配めくばせしたいような目つきで、穏やかに受け答えをしていた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ルスは各種の燻製料理をぎっしり詰めこんだ食品容器をさげベラントに目配めくばせをする。そこで三人は打連うちつれだって金博士の住む地下室へと下りていった。
美女たをやめにもうれしげに……たのまれてひとすくふ、善根ぜんこん功徳くどく仕遂しとげたごと微笑ほゝゑみながら、左右さいうに、雪枝ゆきえ老爺ぢいとを艶麗あでやかて、すゞしいひとみ目配めくばせした。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
裁判長は一寸首をひねったが、直に休憩を宣して、陪席判事に目配めくばせすると大股にゆっくり歩きながら退廷した。
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
「……あの娘さんねえ」と、彼に目配めくばせのような笑いを送りながら、小母さんは、声をひそめた。「ああして、もう二時間も前から、ずっとあそこに立っているのよ」
待っている女 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
貫兵衞が目配めくばせすると、お蔦は清五郎の手から盃をさらつて、菊次郎のところへ持つて行きました。貫兵衞の義理の弟で三十前後、これは苦み走つたなか/\良い男です。
取寄とりよせ是をくはんと爲るを長助は目配めくばせをなしとむていゆゑさてはと思ひ何かまぎらして是をくはず夫より又七は新道しんみちの湯に行けるに長助もあとより同くきたり彼の毒藥どくやくをお熊が入たる事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
村田は周平の方へ一寸目配めくばせをして、つと扉を押した。周平は黙って彼の後に随った。
反抗 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
わしがお比丘に目配めくばせしたら惠梅比丘尼は林の中へ駈込んで逃げたから、最ういと思い、種々いろ/\云ってすきを見て逃げようと思い、只今上げます、ちっとばかり旅銀ろぎんも有るから差上げますから
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
基康 (家来に目配めくばせす)出発のしたくをしなさい。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
と新太郎君は寛一君に目配めくばせして階段を駈下りた。
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
孫三郎に目配めくばせされて、早々に引下がると、次は若殿時之助、これは敷居際で默禮しただけ。
待居たり或日將軍家には御庭おんにはへ成せられ何氣なにげなく植木うゑきなど御覽遊ごらんあそばし御機嫌ごきげんうるはしく見ゆれば近江守は御小姓衆おこしやうしう目配めくばせし其座を退しりぞけ獨り御側おんそば進寄すゝみより聲をひそめて大坂より早打はやうちの次第を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
父は暖炉の隅にすわっていて、柄にもなく興味あるふうを見せながら、その日のことを尋ねだした。彼は話してるうち、メルキオルが二人の子供とひそかに目配めくばせしてるのを認めた。
だが、お清は向うの隅に立って、周平の方へちらと目配めくばせをしていた。周平も大胆に目配せを返した。彼女は水を持ってきてくれた。煖爐にあたる真似をして、肩を一寸聳かしてみせた。
反抗 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
浴衣ゆかたの上だけれど、紋の着いた薄羽織うすばおりひっかけて居たが、て、「改めて御祝儀を申述べます。目の下二しゃく貫目がんめかかりませう。」とて、……およごしのぞいて魂消たまげて居る若衆わかいしゅ目配めくばせでうなずかせて
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
博士は、あとのことを頼んで、先生と千二の方へ目配めくばせをした。
火星兵団 (新字新仮名) / 海野十三(著)
平次は八五郎に目配めくばせして、必死と狂ふ一色友衞をはるかの方に違ざけ乍ら續けました。
お清は周平の肩から肩掛を引ったくりながら、目配めくばせと一緒に云った。
反抗 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
天一坊初め一味のともがら町奉行御役宅の玄關げんくわんさしいでけるに豫て越前守が見知人として近習きんじゆに仕立召つれし彼甚左衞門善助は此時ぞと天一坊を能々よく/\ればまぎれもなき寶澤なれば越前守に目配めくばせなしひそかにたもと
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
虻熊課長はそういって、部下に目配めくばせをしたのであった。
とこたえて、竹見は、ハルクに、ちくりと目配めくばせした。
火薬船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
帆村探偵は、正太の方に、目配めくばせをした。
人造人間エフ氏 (新字新仮名) / 海野十三(著)