玳瑁たいまい)” の例文
玳瑁たいまいの地に金蒔絵きんまきえで丸にいの字の田之助たゆうの紋が打ってあるという豪勢な物、これが、その日暮しのお菊の髪に差さっていたのがこの際不審の種であった。
室子の家の商品の鼈甲は始め、玳瑁たいまいと呼ばれていた。徳川、天保の改革に幕府から厳しい奢侈しゃし禁止令が出て女の髪飾りにもいわゆる金銀玳瑁はご法度はっとであった。
(新字新仮名) / 岡本かの子(著)
諸行しょぎょう無常は浮世のならいそれがしの身の老朽おいくち行くは、さらさら口惜くちおしいとも存じませぬが、わが国は勿論もちろん唐天竺からてんじく和蘭陀オランダにおきましても、滅多めったに二つとは見られぬ珊瑚玳瑁たいまいぎやまんのたぐい
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
大きなスペインふう玳瑁たいまいの飾りぐし、くっきりと白く細いのどを攻めるようにきりっと重ね合わされた藤色ふじいろえり、胸のくぼみにちょっとのぞかせた、燃えるようなの帯上げのほかは
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
崔は形見として、玳瑁たいまいのかんざしを女に贈った。女は玉の指輪を男に贈った。
平次は小首を傾げて、むごたらしい殺されやうをした女の頭を見詰めて居ります。其處には、不思議に落ち散りもせず玳瑁たいまいくしと、珊瑚さんごの五分玉に細い金足をすげたかんざしがもう一本あつたのです。
天女も五衰ごすいぞかし、玳瑁たいまいくし、真珠の根掛ねがけいつか無くなりては華鬘けまんの美しかりけるおもかげとどまらず、身だしなみものうくて、光ると云われし色艶いろつや屈托くったくに曇り、好みの衣裳いしょう数々彼に取られこれえては
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
彼の家には、昔その祖先の一人がカヤンガル島を討った時敵の大将を唯の一突きに仕留めたというほまれの投槍が蔵されている。彼の所有する珠貨ウドウドは、玳瑁たいまいが浜辺で一度に産みつける卵の数ほど多い。
南島譚:01 幸福 (新字新仮名) / 中島敦(著)
珠玉、金銀、織物、陶器、犀角さいかく玳瑁たいまい翡翠ひすい珊瑚さんご孔雀くじゃく闘鴨とうおう鳴鶏めいけい、世の七宝百珍にあらざる物はない。そしてそれは金鞍きんあんの白馬百頭の背に美しく積まれて、江岸の客船まで送りとどけられた。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
髪飾りなどは銀や玳瑁たいまいでございました。
怪しの者 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
玳瑁たいまいといふでねヱかナ』
鴉と正覚坊 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
玳瑁たいまいきてうしほたる。
独絃哀歌 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
玳瑁たいまいはふたつ重なる。
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
玳瑁たいまいの櫛を出して問い詰めると、辰はすぐさま頭を掻いて、じつは誠に申訳ないが、年の暮れのある晩稼業しょうばい帰途かえりに、筋交すじかい御門の青山下野守しもつけのかみ様の邸横で拾ったのだが
珠や玳瑁たいまいで作られた大きい盤の上には、魚のひれや獣のももが山のように積まれてあった。長夜の宴に酔っている王の眼には、酒の池も肉の林ももうはっきりとは見分けがつかないらしかった。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
平次は小首を傾けて、むごたらしい殺されようをした女の頭を見詰めております。そこには、不思議に落ち散りもせず玳瑁たいまいくしと、珊瑚さんごの五分玉に細い金足をすげたかんざしがもう一本あったのです。
繻珍しゅちんの帯にお召の着物、玳瑁たいまいくしにギヤマンのかんざし、さんごの帯留おびどめ鹿の子の帯揚おびあげ、そして蒔絵まきえの下駄を穿かせて、塗りのおかごに男芸者をたくさん付けて、堺町さかいまちの勘三郎芝居へ連れて行って頂戴
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
うつくしき玳瑁たいまい
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ええと、何だって?——木地を塗りて玳瑁たいまいあるいは大理石マルメルの観をなさしむる法、とくらあ。
元禄十三年 (新字新仮名) / 林不忘(著)
玳瑁たいまい幸福しあはせに住む。
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
上りがまちへ腰を下ろしながら見ると、上り際の縁板の上へ出して、畳から高さ一尺ほどの紫檀したんの台が置いてあって、玳瑁たいまいの櫛や翡翠ひすい象牙ぞうげ水晶すいしょう瑪瑙めのうをはじめ、金銀の細工物など、値の張った流行はやりの品が