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物干
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ものほし
ふりがな文庫
“
物干
(
ものほし
)” の例文
南東
(
みなみひがし
)
の
開
(
あ
)
いた二階は
幸
(
さいわい
)
に明るかった。
障子
(
しょうじ
)
を開けて
縁側
(
えんがわ
)
へ出た彼女は、つい鼻の先にある西洋洗濯屋の
物干
(
ものほし
)
を見ながら、津田を
顧
(
かえり
)
みた。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「何? 岡つ引を呼んで來た。飛んでもねえ、誰が、そんな細工をしやがつたんだ。
物干
(
ものほし
)
が惡きア大工でも呼んで來るがいゝ」
銭形平次捕物控:032 路地の足跡
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
要次郎に云はれて、おせきも思はず振り仰ぐと、向う側の屋根の
物干
(
ものほし
)
の上に、一輪の冬の月は、
冷
(
つめた
)
い鏡のやうに冴えてゐた。
影を踏まれた女:近代異妖編
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
特性としては、
物干
(
ものほし
)
の柱に立てた丸太のてっぺんなどに羽を休めることである。さてその日も暮れかかってくると、普通のやんまが
夥
(
おびただ
)
しく集まってくる。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
川びらきの当日、わたくしは、あかるいうちから
物干
(
ものほし
)
に上り、火の見にあがって、遠く両国の空にあがるその美しい光りをたのしむだけで不足をいわなかった。
浅草風土記
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
▼ もっと見る
その役者たちは、幾日も熱心に
物干
(
ものほし
)
に下りた
鳶
(
とんび
)
を見て研究したのだそうです。やがて高時の側へ来て、
頻
(
しき
)
りに
嘴
(
くちばし
)
を動かすのは、舞を教えようというのでしょう。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
すると
一人
(
ひとり
)
の
思付
(
おもいつき
)
に、この酒を
彼
(
あ
)
の高い
物干
(
ものほし
)
の上で飲みたいと云うに、全会一致で、サア屋根づたいに
持出
(
もちだ
)
そうとした処が、物干の上に
下婢
(
げじょ
)
が三、四人涼んで居る。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
そのあいだに四つの影だ、手を引き合うようにしていろは屋の
物干
(
ものほし
)
から外へのがれ出た。
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
正午
(
ひる
)
少し
後
(
さが
)
った頃、公園の見晴しで、花の中から
町中
(
まちなか
)
の桜を
視
(
なが
)
めていると、向うが山で、居る処が高台の、両方から、谷のような、一ヶ所空の寂しい
士町
(
さむらいまち
)
と思う所の、
物干
(
ものほし
)
の上にあがって
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
様子如何に? と見下ろします——ああ綺麗だ! 地境の隣にあたる浄音寺の境内から西がわの長屋の
物干
(
ものほし
)
、質屋の黒塀のかげ、表通りを見れば忍川の水門尻のあたりまで、点、点、点、点
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
物干
(
ものほし
)
に富士やをがまむ
北斎忌
(
ほくさいき
)
自選 荷風百句
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
赤い更紗の風呂敷(これは今は東京ではめつたに見られない、風呂敷として染めて重に赤地へ黒と白との模樣があるもの)それから
襁褓
(
おむつ
)
といふものが軒下に干されてある……といふやうな錯雜した景色の後ろに——大阪風の
棟數
(
むねかず
)
の多いごたごたした屋根の群の上に遙に聳やぎ立つ
物干
(
ものほし
)
が見える。
京阪聞見録
(旧字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
隣の洗濯屋の
物干
(
ものほし
)
に
隙間
(
すきま
)
なく
吊
(
つる
)
されたワイ
襯衣
(
シャツ
)
だのシーツだのが、
先刻
(
さっき
)
見た時と同じように、強い日光を浴びながら、乾いた風に揺れていた。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
半七も
物干
(
ものほし
)
へあがって、今夜からもう流れているらしい
天
(
あま
)
の河をながめていると、下から女房のお仙が声をかけた。
半七捕物帳:35 半七先生
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
家
(
うち
)
の屋根と来たら、家主がケチでトン/\
葺
(
ぶ
)
きが腐りかけているんだもの、
物干
(
ものほし
)
の下なんか猫が歩いても踏み抜きそうよ、嘘だと思ったら、八五郎親分、あの屋根を渡ってみて下さい
銭形平次捕物控:236 夕立の女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
が、見馴れぬものが少しでもあると、
可恐
(
こわ
)
がって近づかぬ。一日でも二日でも遠くの方へ
退
(
の
)
いている。
尤
(
もっと
)
も、時にはこっちから、
故
(
わざ
)
とおいでの儀を
御免蒙
(
ごめんこうむ
)
る事がある。
物干
(
ものほし
)
へ
蒲団
(
ふとん
)
を干す時である。
二、三羽――十二、三羽
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
私は一案を
工風
(
くふう
)
し、
抑
(
そ
)
も虱を殺すに熱湯を用うるは
洗濯婆
(
せんたくばばあ
)
の旧筆法で面白くない、
乃公
(
おれ
)
が一発で殺して見せようと云て、厳冬の
霜夜
(
しもよ
)
に
襦袢
(
じゅばん
)
を
物干
(
ものほし
)
に
洒
(
さら
)
して虱の親も玉子も一時に枯らしたことがある。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
その家の
物干
(
ものほし
)
から斜に見える前の青楼の裏二階で酒宴の最中です。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
向
(
むこう
)
に見える高い宿屋の
物干
(
ものほし
)
に
真裸
(
まっぱだか
)
の男が二人出て、
日盛
(
ひざかり
)
を事ともせず、
欄干
(
らんかん
)
の上を
危
(
あぶ
)
なく渡ったり、または細長い横木の上にわざと
仰向
(
あおむけ
)
に寝たりして
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
すてきに
物干
(
ものほし
)
が
賑
(
にぎやか
)
だから、
密
(
そっ
)
と寄って、隅の本箱の横、
二階裏
(
にかいうら
)
の
肘掛窓
(
ひじかけまど
)
から、まぶしい目をぱちくりと
遣
(
や
)
って
覗
(
のぞ
)
くと、柱からも、横木からも、頭の上の
小廂
(
こびさし
)
からも、
暖
(
あたたか
)
な影を
湧
(
わ
)
かし、羽を光らして
二、三羽――十二、三羽
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
物
常用漢字
小3
部首:⽜
8画
干
常用漢字
小6
部首:⼲
3画
“物干”で始まる語句
物干竿
物干棹
物干台
物干場
物干挟