柏餅かしわもち)” の例文
起きるのに張合がなくて、細君の、まだ裸体はだか柏餅かしわもちくるまっているのを、そう言うと、主人はちょっと舌を出して黙ってく。
売色鴨南蛮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
うすい蒲団へ柏餅かしわもちにくるまって、気の小さい目をしながら、みんなの馬鹿話を聞いていると、何時までも飽きない気がする。
醤油仏 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
向側の「かめや」にても十九日にはやはり青竹にて手すりをこしらえ、柏餅かしわもちをその日ばかり売ります。エビス様の絵の団扇うちわを客にだしました。
その時鍋の柄を片手に持ち片手で柄をトントンと叩くとオムレツが段々端へ寄ってその時鍋をのようにあおればひとりで柏餅かしわもちのようになります。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
東京などでも三月にむろ咲きの桃の花を求めて、雛祭りをするのをわびしいと思う者がある。去年のかしわの葉を塩漬にしておかぬと、端午たんご節供せっくというのに柏餅かしわもちは食べられぬ。
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
みぞれがバラ/\降って参りまして、ごく寒いから、新吉は食客いそうろうの悲しさで二階へあがって寝ますが、五布蒲団いつのぶとん柏餅かしわもちでもまだ寒いと、肩の処へ股引などを引摺込ひきずりこんで寝まするが
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
何のつもりか岡田はまだ寝ている太田の部屋の唐紙からかみを開けて見て、何かものを言いたげにしたが、そこに一枚のうすい布団を、柏餅かしわもちにして寝ている太田の姿を見ると、ほっ
(新字新仮名) / 島木健作(著)
柏餅かしわもちになって、くるまっていた蒲団を、それでも、法印の寝すがたの上にふうわり掛けてやって、そこは、お手の物、ほとんどかすかなきしみも立てず、立てつけの悪い木ぶすまをあけて
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
折のふた取ればされて柏餅かしわもち
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
第三十六 米のオムレツ は手軽にすると普通のオムレツを焼いて中へ御飯を入れて塩胡椒を振って柏餅かしわもちのように合せますがそれでは味がありません。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
五月節供の柏餅かしわもちと、柏の葉の伸び方の関係ぐらいは、喰いちがわぬようにしたいものである。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
柏餅かしわもち家系いやしといふにあら
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
ちょうど塩煎餅しおせんべいを抜くように茶筒の蓋でまるい煎餅ぐらいなペースを抜いて菓物くだもののジャムを何でも構いませんから小匙に一杯ほど真中まんなかへ置いて柏餅かしわもちのようにピタリと双方から合せます。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)