昨夕ゆふべ)” の例文
長い手紙を巻き収めてゐると、与次郎がそばて、「やあ女の手紙だな」と云つた。昨夕ゆふべよりは冗談をいふ丈元気がい。三四郎は
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
正太しようたはかけりてたもとおさへ、美登利みどりさん昨夕ゆふべ御免ごめんよと突然だしぬけにあやまれば、なにもおまへ謝罪わびられることい。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「外では遊んでて、家へ帰ると忙しい忙しいつて吹聴するのさ。昨夕ゆふべもママと喧嘩した話、したげようか」
双面神 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
せよと云に曲者は半四郎の心中しんちうはかられざれば有難しと口には云て食事をすれどもかうのどへは通らずふるうちに半四郎も食事を仕舞しまひたゝきて女をよび昨夕ゆふべからの旅籠はたごさけさかな代共だいとも勘定を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
わたくし昨夕ゆふべ以來いらいのさま/″\の不快ふくわい出來事できごとをばあらつたやうわすれてしまつた。
『それもな、滅多にそんな気を起したことはねえだな。潮来には、月に五度も六度も来るだけども、丸で忘れたやうになつてゐたゞな。それが、何うしてだか、昨夕ゆふべはひよつくり行く気になつた——』
船路 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
「なに、昨夕ゆふべつたんだ。つたんだ。君が舞台のうへて、美禰子さんと、遠くではなしをしてゐたのも、ちやんと知つてゐる」
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かしくけではあられぬはるこほりイヤぼくこそが結局けつきよくなりいもといふものあぢしらねどあらばくまであいらしきか笑顔えがほゆたかにそでひかへてりやうさん昨夕ゆふべうれしきゆめたりお前様まへさま学校がくかう
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
其時平岡は座敷の真中まんなか引繰ひつくかへつててゐた。昨夕ゆふべどこかのくわいて、飲みごした結果けつくわだと云つて、赤いをしきりにこすつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
願ひは何ぞ行きも帰りも首うなだれて畦道あぜみちづたひ帰り来る美登利が姿、それと見て遠くより声をかけ、正太はかけ寄りてたもとを押へ、美登利さん昨夕ゆふべは御免よと突然だしぬけにあやまれば
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
自分のあたまが、その位のぼんやりさ加減であつたら、昨夕ゆふべの会談にも、もう少し感激して、都合のいゝ効果を収める事が出来たかも知れない。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
勉強が佐々木にかはつたから、昼寐をする説明にはならないが、与次郎が、昨夕ゆふべ先生に例の話をした事丈は是で明瞭になつた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「どうも左様さうらしいですね。いろなんだかくないと思つた。平岡さんとは大違ひだ。あの人の体格はいですね。昨夕ゆふべ一所にに入つて驚ろいた」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
おれは少々憎らしかつたから、昨夕ゆふべは二返逢ひましたねと云つたら、えゝ停車場で——君はいつでもあの時分出掛けるのですか、遅いぢやないかと云ふ。
坊っちやん (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)