日暮方ひぐれがた)” の例文
松島まつしまから帰途かへりに、停車場ステーシヨンまでのあひだを、旅館りよくわんからやとつた車夫しやふは、昨日きのふ日暮方ひぐれがた旅館りよくわんまで、おな停車場ていしやばからおくつたをとこれて、その心易こゝろやす車上しやじやうはなした。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それからかなりゆるりと、出たりはいったりして、ようやく日暮方ひぐれがたになったから、汽車へ乗って古町こまち停車場ていしゃばまで来て下りた。学校まではこれから四丁だ。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そこから馬を返し、木船きぶねに乗って向う岸に渡りパーチェという駅まで着きました。これはゲンパラという坂のけわしい山の下に在る駅であって、此駅ここ日暮方ひぐれがた着きました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「もしや今日の日暮方ひぐれがた、あの時雨堂で、一節切ひとよぎりを吹いておいでになったお方ではありませんか」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
丁度十一日の事で、娘はうちけ出して日暮方ひぐれがたからお参りにきました。
(何となく、一帯に日暮方ひぐれがたの景色となる。)
日没の幻影 (新字新仮名) / 小川未明(著)
見んとするに浪人者は最早もはや日暮方ひぐれがたなれば徐々そろ/\仕舞しまひて歸る樣子ゆゑ長八はあとつきて行けるに下谷山崎町なる油屋といふ暖簾のれんかゝりうら這入はひりしかば長八も同じくつゞいて這入見るに九尺二間如何にも麁末そまつなる浪宅らうたくなるにぞ長八は内のてい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
……骨董屋はとう夜遁よにげをしたとやらで、何のかいもなく、日暮方ひぐれがたに帰ったが、町端まちはずれまで戻ると、余りの暑さと疲労つかれとで、目がくらんで、呼吸いきが切れそうになった時、生玉子を一個ひとつ買って飲むと
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)