掻合かきあ)” の例文
奈何どうでもい……。』と、アンドレイ、エヒミチは體裁きまりわるさうに病院服びやうゐんふくまへ掻合かきあはせて、さも囚人しうじんのやうだとおもひながら
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ほっそりした姿で、薄い色のつまを引上げ、腰紐を直し、伊達巻をしめながら、襟を掻合かきあわせ掻合わせするのが、茂りの彼方かなたに枝透いて、すだれ越に薬玉くすだまが消えんとする。
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
甲斐はやさしい眼で七十郎を見まもり、七十郎は怒りのためにどもった。彼はふところで組んでいた両手を出し、えり掻合かきあわせながら、冗談じゃない、と吃った。
くづせし膝立て直しきつころもの襟を掻合かきあはせぬ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
宿へ遁返にげかえった時は、顔も白澄むほど、女二人、杓子と擂粉木を出来得る限り、掻合かきあわせた袖の下へ。——あら、まあ、笛吹は分別で、チン、カラカラカラ、チン。
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
エヒミチは体裁きまりわるそうに病院服びょういんふくまえ掻合かきあわせて、さも囚人しゅうじんのようだとおもいながら、『どうでもいいわ……燕尾服えんびふくだろうが、軍服ぐんぷくだろうが、この病院服びょういんふくだろうが、おなじことだ。』
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
間は稲荷山いなりやまただ一丁場ひとちょうばだけれども、線路が上りで、進行が緩い処へ、乗客が急に少く、二人三人と数えるばかり、おおきな木の葉がぱらりと落ちたようであるから、掻合かきあわす外套がいとうそで
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かれ發狂者はつきやうしやらしいところは、始終しゞゆうつた樣子やうすと、へん眼付めつきとをするのほかに、時折ときをりばんになると、てゐる病院服びやうゐんふくまへ神經的しんけいてき掻合かきあはせるとおもふと、はぬまでに全身ぜんしんふるはし
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
居坐居いずまいを直して、キチンとすると、掻合かきあわせる浴衣を……くぐって触る自分の身体からだが、何となく、するりと女性にょしょうのようで、ぶるッとして、つい、と腕を出して、つくづくとながめる始朱。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かれ発狂者はっきょうしゃらしいところは、始終しじゅうった様子ようすと、へん眼付めつきとをするのほかに、時折ときおりばんになると、ている病院服びょういんふくまえ神経的しんけいてき掻合かきあわせるとおもうと、わぬまでに全身ぜんしんふるわし
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
おんながその私の手首を、こう取ると……無意識のようじゃありましたが、下の襟を片手で取って、ぐいと胸さがりに脇へ引いて、掻合かきあわせたので、災難にも、私の手は、馥郁ふくいくとものの薫る
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
与吉は半被はっぴの袖を掻合かきあわせて、立って見て居たが、急に振返って
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
與吉よきち半被はつぴそで掻合かきあはせて、つてたが、きふ振返ふりかへつて
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
よいめて来た」「おおさむ」など、みんなえり、袖を掻合かきあわす。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とさら/\と法衣ころもそで掻合かきあはせるおとがして
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)