なっ)” の例文
マアこの節はそのゴム人形も立派な国民となって学問もすれば商工業も働き、兵士にすれば一命をかろんじて国のめに水火にも飛込む。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ですがたった一つ悪い事にはあの年になっだ女の後を追掛る癖が止みませんから私しは時々年に恥ても少しはつゝしむがよかろうと云いました
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
そうするとバラバラになるから別の大きい鍋へ湯を沢山沸かして湯の中へ薄い鍋を入れて今のバラバラになった身を両手で揉みながら落して五
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
こうなって見ると、もうひそまッているも何となくきまりが悪くなって来たから、文三が素知らぬ顔をしてふッと奥座敷を出る、その顔をお鍋は不思議そうにながめながら
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
……それ源ちゃんは斯様こんなだし、今も彼の裁縫しごとしながら色々いろんなことを思うと悲しくなって泣きたくなって来たから、口のうちで唱歌を歌ってまぎらしたところなの。
二少女 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
里俗鰡堀りぼくりゅうぼり差懸さしかかると俄然がぜん紫電一閃しでんいっせんたちまち足元があかるなった、おどろいて見ると丸太ほどの火柱が、光りを放って空中へ上る事、幾百メートルとも、測量の出来ぬくらいである
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
ある気狂い女が夢中になって自分の子の生血を取てお金にし、それから鬼に誘惑だまされて自分の心を黄金こがねに売払ったという、恐ろしいお話しを聞いて、僕はおっかなくなり
忘れ形見 (新字新仮名) / 若松賤子(著)
荷をみんおろしてしまって空身からみなってゝ歩けねえ事はあんめえ、遅くけえると母様かゝさまに叱られるから急いでくんろよ、そうあと退さがッちゃア困るべえじゃねえか、青々どうした青
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
すなわちそのスミイレのイが自然に略せられてそれがスミレとなったのだと言う訳だ。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
かれもし一匹まえの雄犬となりなば、その時こそは妾が今の、この言葉をば伝へ給ひて、妾がためには雄の仇、かれがためには父の仇なる、彼の金眸めを打ち取るやう、力になって給はれかし。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
午後の一時過に、私は田圃脇たんぼわきの道を通って、千曲川の岸へ出た。あしよもぎ、それから短いやなぎなどの多い石の間で、長野から来ている師範校の学生と一緒になった。A、A、Wなどいう連中だ。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
手は刀を離さず、必死となっ夢我むが夢中、きらめくやいばは金剛石の燈下にまろぶ光きら/\截切たちきる音はそらかく矢羽やばねの風をる如く、一足退すさって配合つりあいただす時はことの糸断えて余韵よいんのある如く、こころ糾々きゅうきゅう昂々こうこう
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
思切り笑へなくなった悲しい喜び
鶴彬全川柳 (新字旧仮名) / 鶴彬(著)
夫は直々じき/\両女ふたりにお問成といなされば分ります、う云う事になって見ますと何気なく二人をまねいたのが天の助けでゞも有たのかと思います
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
名を求めぬどころか、蘭学書生と云えば世間に悪く云われるばかりで、すですでに焼けになって居る。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
二寸も突込つきこもうと云うには非常の力を入れて握るから二ツの脚が一ツにるのサ(大)一ツになっても穴は横にひらたく開く筈だ
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
暑いじゃないかと言葉を掛けて、そのまゝ傾向あおむきに大の字なりになって倒れた。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
倒れた下は梯子段ゆえドシン/\と頭からせなから腰のあたりを強く叩きながら頭が先になって転げおちる、落た下に丁度丸い物があったから其上へヅシンと頭を突く
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
是は外でも無いアレ丈の丸い者が頭へ当って当ッた儘で四五分間も其所を圧附おしつけて居たのです、其中に命は無くなるし血は出て仕舞い膨上はれあがるだけの精が無くなっ
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
今度は又警察署長「それで分ッて居るじゃ無いか藻西太郎もにしたろうと云う者の名前の初めを書掛かきかけて事切れとなったのだ、藻西太郎とは此老人の唯一人の甥だ、老人が余ほど寵愛ちょうあいして居たと云う事だ」
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)