懇篤こんとく)” の例文
おい懇篤こんとくに頼まれたお方じゃ! それにおいには義兄弟じゃ! 安全の場所へおかくまいするまでは、上人の身辺で荒々しい所業など
犬神娘 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あらかじめ、明朝の秀吉の登城時刻やら、相伴しょうばんの人員やらを問い合わせ、また、信長の懇篤こんとくな内意をも伝えておくためであった。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
各人は私利にのみ汲々きゅうきゅうとして、組織的精神は競争心と変じ、懇篤こんとくのふうは苛酷と変じ、すべての者に対する創立者の慈愛は各人相互の怨恨えんこんに変わった。
いまかれ當世たうせいかくれもき、櫻木海軍大佐さくらぎかいぐんたいさから、くも懇篤こんとくなる薫陶くんとうけて生長せいちやうしたことは、世界せかい第一だいいち學校がくかう卒業そつげふしたよりも、わたくしためにはうれしいです。
二人の婦人の懇篤こんとくな温情は、彼の身にしみ込んだ。彼はそのうちとけた好意を、その社交的な愛想を、真面目まじめなものだと信じたい心から、誇大して感じた。
四、五位さぎのプロムナアドは泥鰌どじょうの悩み。懇篤こんとく重厚なるジェルメエヌ後家の述懐、涙ぐましき苦業の数々。
最も懇篤こんとくに取扱いくれたるはうれし。ここにて弁当をしょくす。茶を饗せられたり。此迄これまでは人家無く、附近にも更に人家無しと。河畔に土人小屋あり。此れまするなりと。
関牧塲創業記事 (新字新仮名) / 関寛(著)
え、君、二月も敵陣に居て、敵兵の看護をしたというでないか。それで、懇篤こんとくで、親切で、大層奴等のために尽力をしたそうで、敵将が君を帰す時、感謝状を送ったそうだ。
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その夜、我が明智小五郎は、富豪の懇篤こんとくなる招きを受けて、宮崎邸の門をくぐった。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
今度二十五周年記念号を出すので何か書くようとの懇篤こんとくな御すすめがありましたので何かと考えてみましたが右様の次第でありますからほとんど何も申上げる材料はないのでありますが
書簡(Ⅱ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
初めて外国へ出たとき桑港サンフランシスコで検疫のため荷物を消毒せられて大損害を受け、それからエンゼル島へ逐いやられて二週間流罪の憂き目を見たとき、老師は懇篤こんとくなる手紙を送りて、大いに激励せられた。
けれど生命いのちだけは取止めたので、彼の義兄で、身分の低い同藩の侍——尾形周蔵を呼んで、懇篤こんとくに引き渡した。
夕顔の門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
え、君、二月ふたつきも敵陣にゐて、敵兵の看護をしたといふでないか。それで、懇篤こんとくで、親切で、大層奴らのために尽力をしたさうで、敵将が君を帰す時、感謝状を送つたさうだ。
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
懇篤こんとくな返書とともに極めて綿密な一計をさずけて来た。すなわちう。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
殊になお、勝家から家康へ宛てた懇篤こんとくなる書翰しょかんにたいしても
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)