待遇あしら)” の例文
おとらは往返いきかえりには青柳の家へ寄って、姉か何ぞのように挙動ふるまっていたが、細君は心の侮蔑をおもてにも現わさず、物静かに待遇あしらっていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
村の人達は、富江を淡白きさくな、さばけた、面白いひととして心置なく待遇あしらつてゐる。殊にも小川の母——お柳にはお贔負きにいりで、よくそのいへにも出入する。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
その当人の器量次第では、妾と思はぬ、奥として待遇あしらふほどに、そこを万々承知して一ツよい奴、いゑ何よいお嬢様上りのものを、周旋してくれまいかとの、仰せを蒙りましたので。
誰が罪 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
それがあるばかりにお絹と継母ままははとの間おもしろからず理屈をつけて叔父幸衛門にお絹はあずけられかれこれ三年の間お絹のわが家に帰りしは正月一度それも機嫌きげんよくは待遇あしらわれざりしを
置土産 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
し情談をいいかけられたら、こう、花を持たせられたら、こう、なぶられたら、こう待遇あしらうものだ、など、いう事であるが、親の心子知らずで、こう利益ためを思ッて、云い聞かせるものを
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
さてこそ遂に狂したれと、妾は急ぎ書生を呼び、きほどに待遇あしらわしめつつ、座を退しりぞきてその後の成行きをうかがうち、書生は客をすかなだめて屋外にいざない、みずか築地つきじなる某教会に送り届けたりき。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
世事にれない青年や先輩の恩顧に渇する不遇者は感激して忽ち腹心の門下や昵近の知友となったツモリにひとりでめてしまって同情や好意や推輓すいばん斡旋あっせんを求めに行くと案外素気そっけなく待遇あしらわれ
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
あの方利口者だから好い加減に待遇あしらってしぼっていたんですが、私立探偵の山本さんッていうパトロンがある事が分ったもんだから、川口さん怒って、欺されたって一時大騒ぎをやってましたが
青い風呂敷包 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
村の人達は、富江を淡白な、さばけた、面白い女として心置なく待遇あしらつてゐる。殊にも小川の母——お柳にはお氣に入りで、よく其家にも出入する。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
それをお勢は、生意気な、まだ世のさまも見知らぬ癖に、明治生れの婦人は芸娼妓げいしょうぎで無いから、男子に接するにそんな手管てくだはいらないとて、鼻のさき待遇あしらッていて、更に用いようともしない。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
萬一其麽事があつては誠に心外の至りであると智惠子は思つた。それで成るべく寡言ことばすくなに、隙のない樣に待遇あしらつてゐるが、腑に落ちぬ事があり乍らも信吾の話が珍しい。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
それで可成なるべく寡言くちすくなに、すきのない様に待遇あしらつてはゐるが、腑に落ちぬ事があり乍らも信吾の話が珍しい。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)