引渡ひきわた)” の例文
おまけに一人の親仁おやじなぞは、媽々衆かかしゅう行水ぎょうずいの間、引渡ひきわたされたものと見えて、小児こどもを一人胡坐あぐらの上へ抱いて、雁首がんくび俯向うつむけにくわ煙管ぎせる
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
つくすべしとあつさとされし上早速其所の地主嘉兵衞と其家主いへぬしを呼寄られ城富を引渡ひきわたしとなり隨分ずゐぶん心付けつかはすべき由申付けられけり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「え? ——お前さん、しっかりして下さいよ。あんな二本差なんか、芋侍に引渡ひきわたしさえすれば、それでお仕舞なんだから」
芳年写生帖 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
隙間すきまもなうくろとばり引渡ひきわたせ、こひたすくるよるやみそのやみまちものふさがれて、ロミオが、られもせず、うはさもされず、わしこのかひななか飛込とびこんでござらうやうに。
この驚くべき報告が麓へ拡まると、町からも村からも大勢の加勢が駈着かけつけた。安行の屍体は自宅へ、お杉と𤢖の亡骸なきがらは役場へ、れに引渡ひきわたしの手続てつづきえた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
われこそはおと名高なだか印度洋インドやう大海賊船だいかいぞくせんなり、なんぢ新造軍艦しんざうぐんかんうばはんとて此處こゝつこと久矣ひさしすみやか白旗はくきてゝその軍艦ぐんかん引渡ひきわたさばよし躊躇ちうちよするにおいては、われに七せき堅艦けんかんあり
しかるに勝氏は一身のはたらきを以ていて幕府を解散かいさんし、薩長のに天下を引渡ひきわたしたるはいかなるかんがえより出でたるか、今日に至りこれを弁護べんごするものは、勝氏は当時外国干渉がいこくかんしょうすなわち国家の危機ききに際して
そこの森や彼処かしこ谷合たにあいあさり尽した末に、一里ばかりの山奥にある虎ヶ窟とらがいわやという岩穴に、二人の隠れ潜んでいるのを発見して、男は主人方に引渡ひきわたされ、女は実家へ連れて戻られたが
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
この軍艦ぐんかん獻納者けんなうしやであれば、本艦ほんかん引渡ひきわたしの儀式ぎしきためと、ひとつには、最早もはや異境ゐきやうそら飽果あきはてたればこれよりは、やまうるはしく、みづきよ日本につぽんかへらんと、子ープルスかうから本艦ほんかん便乘びんじやうした次第しだいです。
さて鍼醫はりいの城富は我が願ひかなはず地主嘉兵衞に引渡ひきわたされしかば止を得ず嘉兵衞にともなはれ我が家へ立歸り悲歎ひたんくれて居たりしがやゝありて思ふ樣父の死は是非もなきこと共なりせめては父の亡骸なきがら
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
添状そへじやうにて町奉行大岡殿へ引渡ひきわたし吉之助初瀬留の兩人は家主いへぬしあづけられたりさて喜八儀は火附盜賊に相違なしとて送りになりしかば直樣すぐさま入牢じゆらう申付られしに付き家主平兵衞は喜八を片蔭かたかげまね段々だん/\の樣子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)