嵩高かさだか)” の例文
たちまち恐ろしく嵩高かさだかな、色彩のゆたかなものを肩にかけながら物々しいきぬずれの音をひゞかして出て来たのに、又驚きを新たにした。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
しかも、桑籠に盛りあがつてゐるくらゐはまだ輕い方で、背を丸くして、うつむいて歩くと頭を越すほど、嵩高かさだかな桑の葉を運ぶのだつた。
桑摘み (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
「あれじゃ」「ほう、またひどく嵩高かさだかな物だが、何でござろうか」「おおいをとれ」はっと答えて家来の一人がかぶせてある蔽い布をとった。
備前名弓伝 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そして執事を通じてその嵩高かさだかの原稿を伯爵の手もとまでさし出した。伯爵はその折椅子にもたれてぽかんとしてゐたらしかつた。
それがそのあたりの田圃だった時分のさまを可懐なつかしくおもい出させた。——それにはその道の上に嵩高かさだかにつまれた漬菜つけなのいろ。
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
「三十ですって……。」お庄はあまり嵩高かさだかなような気がして、そんな年数としかずの考えが、どうしても頭脳あたまへ入らなかった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
何も大路であるから不思議なことは無い。たまたま又非常に重げな嵩高かさだかの荷を負うてあえぎ喘ぎ大車のくびきにつながれてよだれを垂れ脚を踏張ふんばって行く牛もあった。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
おのれが乗物の顔して急ぐ気色けしきも無くすぐる後より、蚤取眼のみとりまなこになりて遅れじと所体頽しよたいくづして駈来かけくる女房の、嵩高かさだかなる風呂敷包をいだくが上に、四歳よつほどの子を背負ひたるが
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
夜具か何かを嵩高かさだかに包んだ私の身体よりも大きな包みを背負つて、私は教へられた通り、辻々の電信柱に貼つてある町名札を見ながら、西へ西へとよち/\と歩いて行つた。
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
唐紙からかみを割き疊の表を剥がし、布團の綿を引出し、着て居る着物や帶までも割きましたが、祕傳書と言つた嵩高かさだかなものは素より、御墨附の紙片一枚さへ見付からなかつたのです。
それは、内国貨物及び比較的小なる価値を有つものではあるが嵩高かさだかの貨物の価格が、他の原因とは無関係に、製造業の栄えている国においてより高い理由を吾々に説明するであろう。
五百らは上山で、ようよう陸を運んで来たちとの荷物の過半を売った。これは金を得ようとしたばかりではない。間道かんどうを進むことに決したので、嵩高かさだかになる荷は持っていられぬからである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
大開おほはだけにつたあしに、ずぼんを穿いて、うす鶸茶ひわちやきぬの、手巾ハンケチ念入ねんいりやつを、あぶらぎつた、じと/\したくび玉突たまつき給仕きふじのネクタイとふうに、ぶらりとむすんで、おもて摺切すりきれた嵩高かさだか下駄げた
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
私は荒縄で締めくゝつた嵩高かさだかの幾束かを求めないわけにゆかなかつた。多くの人は和紙を愛し敬つてはくれる。だが更に奥の之を作る人や暮しや信心をも振返つてくれる人が、どれだけゐるだらうか。
和紙十年 (新字旧仮名) / 柳宗悦(著)
病人の着せられている臙脂色えんじいろに白い粗い市松模様を置いた、クレプ・ド・シンの嵩高かさだか羽根布団はねぶとんが思いきり派手なのと、露台への出口が一間の引き違いの硝子戸になっていて
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
唐紙を割き畳の表を剥がし、布団の綿を引出し、着ている着物や帯までも割きましたが、秘伝書といった嵩高かさだかなものはもとより、御墨付の紙片かみきれ一枚さえ見付からなかったのです。
嵩高かさだかな原稿を持ち込んで来たのが、ちょうどこの木蓮の花盛りだったので、彼女はその季節が来ると、それを懐かしく思い出すものらしかったが、ちょうどその時、葉子に来客があって
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
少し大袈裟に言つたら十二頭の駱駝らくだの背に積み分けてもいゝ程嵩高かさだかな書物で、福田博士は波斯ペルシヤ王ゼミイルの御殿へ、人間の歴史を献上に出かけてゆく学者の一にんではあるまいかと思つた。
「いや、何の嵩高かさだかな……」
小春の狐 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)