ひめ)” の例文
ひめは大国主神のことをほんとに美しいよい方だとすぐに大すきにお思いになりました。大神には、第一それがお気にめしませんでした。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
ひめさまのところへあゆつて、ものをいひにくと、いすけよりひめは、おほくめのみことのさいてあるのにがつかれて、うたをうたひかけられました。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
「此方は、つまり男が四人——そして、吾々のカタリーナひめが三人——四人と三人……」
南風譜 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
山懐やまふところに抱かれたおさなひめが、悪道士、邪仙人の魔法で呪はれでもしたやうで、血の牛肉どころか、吉野、竜田の、彩色の菓子、墨絵の落雁らくがんでもついばみさうに、しをらしく、いた/\しい。
玉川の草 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
と侍は人中を縫って、雉子町の横を抜け、紅梅河岸の太田ひめ神社の中へ入った。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
足下きみ昨夜ゆうべはマブひめ(夢妖精)とおやったな! 彼奴あいつ妄想もうざうまする産婆さんばぢゃ、町年寄まちどしより指輪ゆびわひか瑪瑙玉めなうだまよりもちひさい姿すがたで、芥子粒けしつぶの一ぐんくるまひかせて、ねぶってゐる人間にんげん鼻柱はなばしら横切よこぎりをる。
夏野なつのひめにとらす
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
ひめは天皇がわざわざそんなになすって、かくれ隠れてまでおたずねくだすったもったいなさを、一生おわすれ申すことができませんでした。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
「もゝつたふ」の歌、残された飛鳥の宮の執心びと、世々の藤原のいちひめたたる天若みこも、顔清く、声心く天若みこのやはり、一人でおざりまする。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
もっとも十九の時児髷ちごまげに結ったひめで、見る者は十四か五とよりは思わなかった。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
命はひめがわざわざそんなことをおっしゃるので、かえって変だとおぼしめして、あとでそっと行ってのぞいてご覧になりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
いくらか、さうしたものゝえるのは、或時あるとき仁徳天皇にんとくてんのうが、吉備きびのくろひめといふひと訪問ほうもんせられたところが、青菜あをなんでゐたのをつくられたといふおうたであります。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
さらぬだにこの風采ふうさいを、まして、世に、かくまで清きひめやある。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あなたのようなうつくしい、わかいおひめさまにふために、わたしいれずみをしておいた、このめじりいれずみです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)