大河おおかわ)” の例文
大河おおかわにかかっている鉄橋てっきょうもとがくされていたのをこのごろ発見はっけんした。しろかげ線路せんろうえあるいていたのは、それを注意ちゅういするためだった。
白い影 (新字新仮名) / 小川未明(著)
或る晩、家中、店先の涼み台で、大河おおかわから吹く風をれて、種々無駄話をしていました折から、師匠東雲師は、私に向い
其の向うは、わにの泳ぐ、可恐おそろし大河おおかわよ。……水上みなかみ幾千里いくせんりだか分らない、天竺てんじくのね、流沙河りゅうさがわすえだとさ、河幅が三里の上、深さは何百尋なんびゃくひろか分りません。
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そんな噂が、伝わると、夜半よなかから、大坂城の楼櫓ろうやぐらは、炎を噴いて、大河おおかわと、市街と、海とを地獄のように赤くした。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大河おおかわまで持ち出して行って、バケツで水をみあげるのが面倒くさく、じかに流れですすいだりして、襦袢じゅばん浴衣ゆかたを流したりしていた銀子も、それを重宝がりお礼に金を余分に包んだり
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
雨上あまあがりの広田圃ひろたんぼを見るような、ふなどじょうの洪水めいたが、そのじめじめとして、陰気な、湿っぽい、ぬるぬるした、不気味さは、大河おおかわ出水でみずすごいにまさる。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これは、五ツ目からこの姿のままで茶舟ちゃぶねせられ、大河おおかわさかのぼって枕橋へ着き、下金屋の庭が荷揚げ場になっているから、直ぐ其所そこへ引き揚げたものである。
あるところでは、やまられました。また、あるところでは、大河おおかわながれていました。そのかわにははしがかかっていました。おひめさまは、そのはしわたられました。
お姫さまと乞食の女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
片方は大河おおかわさえぎられているから、この一方口いっぽうぐちのがれるほかには逃げ道はなく、まるで袋の鼠といった形……振り返れば、諏訪町、黒船町は火の海となっており
およそ十四五人の同勢で、女交りに騒いだのが、今しがた按摩が影を見せた時分から、大河おおかわしおに引かれたらしく、ひとしきり人気勢ひとけはいが、遠くへ裾拡がりにぼう退いて、しんとした。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
三座は確か類焼の難はのがれたように思いますが、何しろ、吾妻橋際から大河おおかわの河岸まで焼け抜けてしまったのですからいかに火勢が猛威をふるったかはし測られます。
大河おおかわ両岸りょうぎしは、細い樹の枝に、薄紫のもやが、すらすら。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この大火が方附かたづいてから、あの本願寺の門の前を通ると、駒形堂が真直に見えました。そうして、大河おおかわの帆掛け舟が「そんな大火があったかい」といったように静かにすべって行くのが見えました。