出額おでこ)” の例文
そうして、店の隅なる釣棚の高い処に、出額おでこ下睨したにらみをしながら、きょとりと円い目をして、くすりと笑う……おおきな、古い、張子の福助を見た。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
年子としごのようなあたしの妹は、一年ばかり間をおいて学校へ上った。色の白い涼しい眼の子だが出額おでこなので前髪を深くきってさげていたので、眼玉の廂といわれていた。
出額おでこでまたこう、しゃくうように人をた工合が、これでたましいが入ると、ふもとの茶店へ下りて行って、少女こおんなの肩をおおきな手で
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
出額おでこをがッくり、爪尖つまさき蠣殻かきがらを突ッかけて、赤蜻蛉あかとんぼの散ったあとへ、ぼたぼたとこぼれて映る、烏の影へ足礫あしつぶて
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と身を起こして追おうとすると、やっこ駈出かけだした五足いつあしばかりを、一飛びに跳ね返って、ひょいとしゃがみ、立った女房の前垂まえだれのあたりへ、円いあご出額おでこで仰いで
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とぼけた顔。この大業おおぎょうなのが可笑おかしいとて、店に突立つッたった出額おでこの小僧は、お千世の方を向いて、くすりと遣る。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ねずみ嫁入よめいりかつぎそうな小さな駕籠かごの中に、くたりとなって、ふんふんと鼻息を荒くするごとに、その出額おでこ蚯蚓みみずのような横筋をうねらせながら、きょろきょろと
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
白粉おしろいのその頸を、ぬいと出額おでこの下の、小慧こざかしげに、世智辛く光る金壺眼かなつぼまなこで、じろりと見越して
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
なぜというに、目をきょろりと出額おでこの下から、扇子がまえで、会釈をしたように思ったからである。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ぺたんこともゆがんだとも、おほきな下駄げた引摺ひきずつて、前屈まへかゞみに俯向うつむいた、瓢箪へうたん俯向うつむきに、出額おでこしりすぼけ、なさけらずことさらにいたやうなのが、ピイロロロピイと仰向あふむいていて、すぐ
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「ところが、もし、顔が黄色膨れの頭でっかち、えらい出額おでこで。」
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と暮れかかる蜘蛛くものきを仰いだ、やっこ出額おでこは暗かった。
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小僧合点がってんして、たちまち出額おでこ蛸顱巻たこはちまき
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)