へん)” の例文
ことに漢字では女の字をへんまたはつくりに含めるものは、むろん善意を含めることなきにあらざるも、多くの場合むしろ悪意を含ましている。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
彼らの読書の種類は『源氏』とか『古今集』とかいう一部の王朝文学にへんし、それに禅門ぜんもん法語類ほうごるいの知識が加わっていた。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そうじて血のめぐりの好い生体せいたいは健全です。病はへんです。不仁が病です。脳貧血のわるいは、脳充血のわるいに劣りません。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「ああ、あなたの考えはへんし過ぎている、片意地過ぎているようです。拙者は机竜之助をてきとはするが、あなたを敵とする気にはなれないのです」
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
此處こゝ印度洋インドやうもズツト南方なんぽうへんした無人島むじんとうで、一番いちばんちかいマダカツスル群島ぐんたうへも一千哩いつせんマイル以上いじやう亞細亞大陸アジアたいりくや、歐羅巴洲エウロツパしうまでは、幾千幾百哩いくせんいくひやくマイルあるかわからぬほど
けれども過去二十有余年間の明治教育というものは、男子教育にへんしはしないかとの嫌いがありまして、未だ以て国民の教育が完備したと申す事は出来ません。
国民教育の複本位 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
〔譯〕惻隱そくいんの心へんすれば、民或はあいおぼれ身をおとす者有り。羞惡しうをの心偏すれば、民或は溝涜かうとく自經じけいする者有り。辭讓じじやうの心偏すれば、民或は奔亡ほんばう風狂ふうきやうする者有り。
へんというのは差別方面のことであります。事々物々の上に、平等と差別が、こういうふうに入り混り融合している。その理を以下五項に分って説明してあります。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
『文選』を耽読していたのと、どうもへんに山や石のついた字を使わないと、気分があらわれないように思った年少客気かっきの致すところと相俟って、こんな文章となってしまった。
木曽駒と甲斐駒 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
いや、自身はそのいずれにもへんせず、自重しているつもりでも、もう環境がゆるさないのである。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
へんつくりが重なり合ったり離れ過ぎたりして一見盲人の書いたのが点頭うなずかれるのもある。
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
肉食にへんしてもならず、菜食に偏してもならず、何事にも一番大切なのが程と加減を悟るので、これはコンモンセンス即ち常識のある人が注意して物を考えれば誰にでも自然と解ります。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
だから鑑賞かんしやうの上から云へば、菊池の小説を好むと好まざるとは、何人なにびとも勝手に声明するがい。しかしその芸術的価値の批判にも、粗なるが故に許し難いとするのは、好む所にへんするのそしりを免れぬ。
雑筆 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
世界輿地圖せかいよちづ表面ひやうめんあらはれてるものであらうか、矢張やはり印度洋インドやうちう孤島ことうだらうか、それともズツト東方ひがしへんして、ボル子オ群島ぐんとうの一つにでもぞくしてるのではあるまいか。
呉侯と彼のあいだにそんな内輪ばなしがあってから間もなく、陸遜は一躍、へん将軍右都督うととくに昇った。そしてすぐ陸口への赴任を発令されたので誰よりも当人が驚いてしまった。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ボウという名詞とても、後に木へんに奉の字を付与したというのみで、まさか支那語の借用ではあるまいと思う。私の意見が正しいならば、これはホコという語の分化であった。
それがやはり同じように名物の餅を賞翫しょうがんしながら、しきりに語り合っているのは、槍という字は木へんが正しいのか、金偏が本格かというようなことで、話に花が咲いたが、やがて、古往今来
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
〔評〕江藤新平しんぺい、前原一誠いつせい等の如きは、皆維新いしんの功臣として、勤王二なく、官は參議さんぎに至り、位は人臣のえいきはむ。然り而して前後皆亂を爲し誅に伏す、惜しいかな。豈四たんへんありしものか。
鬼作左は、峻厳しゅんげんをもって聞え、仏高力ほとけこうりきは仁者として親しまれ、天野は、中和の人という定評だった。——どちへんつかずというのは、三河の方言ほうげんで、どちらにもへんせぬということらしい。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今までの見かたはあまりに一方にへんしていると思う。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
と、玄徳は彼を容れて、へん将軍に封じ、もっぱら軍路の案内者として重用した。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すこし気に入ると、寵愛ちょうあいへんする傾きは誰に対しても見せる信長であるが、その中でも、村重の武勇は、わけて信長に認められていた。今日までも、信長は人一倍、村重を愛していたといえる。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
情愛にも、日常の感情にも、とかくへんしやすい性格の勝家は
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
前護軍へん将軍 許允きょいん
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)