主水もんど)” の例文
「あれは、福原主水もんどの一件で、殿から、米を喰っているか、と訊かれたという無類の能なしだ。米喰い武士でのうて、米喰い虫だ」
(新字新仮名) / 吉川英治(著)
瑞雲斎と事をともにした人に十津川産の宮太柱みやたちゆうがある。当時大木主水もんどと称してゐた。太柱は和漢洋の三学に通ずるを以て聞えてゐた。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
しかしそれは極秘であって、涌谷と亡き松山(茂庭周防)その子主水もんどのほかには、この原田家でも側近の数人しか知ってはいない。
この上は主人の鈴川主水もんどと、かゝりうどの杵太郎に逢つて、訊けるだけを聽き出し、それから證據を手繰たぐるほかはありません。
「鬼神お松」「鈴木主水もんど」「おその六三ろくさ」「明がらす」など、その当り作として知らる。浄瑠璃にも有名の作少なからず。
明治演劇年表 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
主水もんど澄江すみえも失望したが、とにかく明朝宿を立ち、高萩へ行って猪之松親分を探り、さっきの武士が陣十郎か否か、確かめて見ようと決心した。
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あらかじめ斥候せっこうの連中が皆、上方勢を十万、十四五万と評価して報告して来るうちに、黒田家の毛谷主水もんどだけが、敵は総勢一万八千に過ぎないと言う。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そしてこの評判が源之助の芸格を狭める結果になった。遥かの後昭和十二年十一月明治座に久し振りで鈴木主水もんどの芝居が出た。主水が宗十郎、白糸が時蔵であった。
役者の一生 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
高須隼人はいと、国家老、本多民部左衛門、川合蔵人くらんど、家老並、松平主水もんど、以下用人、番頭、物頭を大手門先の上邸へ招集し、大広間で古事披露の祝宴を張り、宴半ばで
無惨やな (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
この年、江戸で原主水もんどはじめ五十名、芝で火あぶり。つゞいて、その妻子二十六名、同処で火あぶり。
秋風が吹いて、収穫とりいれが済むころには、よく夫婦の祭文語さいもんかたりが入り込んで来た。薄汚うすぎたない祭文語りは炉端ろばたへ呼び入れられて、鈴木主水もんど刈萱かるかや道心のようなものを語った。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
二葉亭は手拭てぬぐいあねさんかぶりにしてほうきかかえ、俯向うつむき加減に白い眼をきつつ、「ところ、青山百人町の、鈴木主水もんどというおさむらいさんは……」と瞽女ごぜぼうの身振りをして
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
鈴木姓は多くしげの名乗りをつけるが、旗本の中にもある。「春は花咲く青山へんに、鈴木主水もんどという武士さむらいが……」などという有名なのがあり、紋所はみんな「稲の丸」である。
故郷七十年 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
主水もんどと云って、此の前にお紺婆の殺されたとき此の家へ出張して犯人夏子を取押えた人で、此の幽霊塔の境内の地理や家の間取りなどは充分に知って居るとの事だから最も妙だ
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
僕等は其夜、鈴木主水もんどの講談を聞きましたが席がはねるや外に出ると、二三人の人が黒田下の交番の方を目がけて小走りに走るので、何事が初まつたかと、僕等も其後について走りました。
夜の赤坂 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
京師の画工丸山主水もんど(応挙)、女鬼をえがくに名あり。予が蔵する物すぐれて妙なり。なにより思いを構えてえがきはじめたりしや、見る人、毛髪竦然しょうぜんとしてたち、実に神画と称すべし。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
「御姓名、お身の上、先程露月よりうけたまわりました。是非一度はお目にかかり度いと存じたところ。わしは根岸に住居いたして当時浪々の大戸主水もんど、片里と号する菲才でござる。この後とても露月同様、御懇意にお願いいたす」
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
有明ありあけ主水もんどに酒屋つくらせて 荷兮かけい
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
鈴木主水もんどというさむらいは
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
家老の大村郷左衛門おおむらごうざえもんの一子大村主水もんどを仮に藩侯の準養子として、幕府に十年の猶予をねがい、ほんとの世継を決定することになっている。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
次で十九日に又大久保五岳、島根近路、打越うちごし古琴と墨田川に遊んだ。五岳、名は忠宜ちゆうぎ、当時の菓子商主水もんどである。近路古琴の二人の事は未だ考へない。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
主水もんど以来の熱心な信者が、刑戮けいりくに洩れて、地下に潜み、あるいは転び切支丹となって、ひそかに邪宗門帰依を続けていたことは充分想像されることで
青山五丁目六丁目は百人町の武家屋敷で、かの瞽女節ごぜぶしでおなじみの「ところ青山百人町に、鈴木主水もんどという侍」
半七捕物帳:54 唐人飴 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
正座に二人、国老の柴田外記と原田甲斐が坐り、脇に三人、宿老の富塚内蔵允くらのすけ、茂庭主水もんど、遠藤又七郎がいた。
前後を囲繞いにょうした家臣の面々、志水浦太夫、原信濃、野尻右馬介、河越喜翁、千村民部、奈良井主水もんど、萩原又兵衛、大妻三河、古畑権内、木曽伯耆ほうき、山村七郎、馬場半左衛門、征矢野六郎、磯尾新兵衛
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
相客に松平主水もんどを呼んでおくから
無惨やな (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
主殿助は、その前に、矢倉の上の兵を、みな遠ざけていたので、すぐ野々村主水もんどからの密書を示し、前後を見まわして囁いた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この裁決は、茂庭主水もんどから申し渡す、という報告が来たのは、三月末のことで、甲斐はいちおうほっとした。
「十五日。晴。今川橋大久保に行。」蘭軒の父信階のぶしなの養母にして信政の妻であつた伊佐の生家、菓子商大久保主水もんどは庚午の歳に猶店を今川橋に持続してゐて
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
それにもかゝはらず、進んで離屋に寢泊りすることを望んだのは、主人鈴川主水もんどの眼をのがれて、自由自在に女を引入れられる、飛んでもない自由さがあつたからです。
肩の格好や歩き方が、恋人主水もんどに似ているからであった。
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
主水もんどは自若とした面持で
無惨やな (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
郷左衛門は、玉枝や主水もんどと並んで、一同のうしろでその様子を眺めていたが、まず、これでよかったというように頷いて——
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
尤も、後で主人の鈴川主水もんどにも確かめましたが、猪之松の言ふことに間違ひはありません。
或日鑑三郎は現住所福島市大町から上京して、再従兄さいじゆうけい窪田くわんさんと共にわたくしの家を訪うた。啓の父清三郎の子が主水もんど、主水の子が即寛で、現に下谷仲徒士町したやなかかちまちに住してゐる。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
主水もんどとそうして澄江すみえとであった。
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「はい、江戸表から参った玉枝でござりまする。お国家老大村郷左衛門おおむらごうざえもん様か、ご子息の主水もんど様にお取次をねがいまする」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「一應尤もだが、天下靜謐せいひつの折柄、無理な詮索せんさくをして江戸から切支丹教徒を擧げるのは面白くない。原主水もんど一味の刑死以來、久しく血腥ちなまぐさい邪宗徒の仕置が絶えてゐるのだから——」
主水もんど様」
善悪両面鼠小僧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
与右衛門は勇躍して、主水もんどを追跡した。そして南部領へ落ちて行こうとする彼を、出羽街道のいかりせきの山中で見つけ
(新字新仮名) / 吉川英治(著)
元和九年十一月二十四日、イタリー人エロニモ師や、かつては千五百石をんだ家康の小姓、ヨハネ原主水もんどの党類をあさり尽すに、町奉行米津勘兵衛よねづかんべえ以下血眼ちまなこになっておる時のことでした。
十字架観音 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
変に思って、顔をのぞいてみると、姿も皮膚の色もまるで変ってしまっているが、それは十数年前にいかりせきの山中でわかれた福原主水もんどのなれの果てであった。
(新字新仮名) / 吉川英治(著)
別當赤井主水もんど樣と、直々のお話もいたしましたが、お組もお蝶も、宗祖樣ことの外お氣に入りで、容易に歸してくれ相もなく、三輪の萬七親分にも頼み、寺社のお係にも申上げましたが
野々村主水もんどは、ぜひなげに、立ち上がった。何か、胸のいたむものが、部下たちのうえに、思いやられ、つい、憤然ふんぜんと、色になって、かれの顔をかすめていた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御隱居の主水もんど樣、御隱居と申しても、實は御先代の惣領で、八十郎樣には、腹違ひの御兄樣に當りますが、御病弱の上お足も惡く、それに學問がお好きで、武家の跡取になるのはお嫌だと申し、屋敷の外に一軒小さい家を
主水もんどを用いて、大沢治郎左衛門を、斎藤家から離反させ——そしてまた、その大沢治郎左衛門を用いて、美濃三人衆の人物を、一人一人歯を抜くように抜いてゆくという順序だが」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
主水もんど樣は?」
「病中のため、御舎弟主水もんど殿をあれに付き添わせましてござります」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「どこにおるのか、その主水もんどなる者は」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「やあ、主水もんどか。どうだ、陥ちたか」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)