一様いちよう)” の例文
旧字:一樣
帝室ていしつをば政治社外の高処こうしょあおたてまつりて一様いちようにその恩徳おんとくよくしながら、下界げかいおっあいあらそう者あるときは敵味方の区別なきを得ず。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
そでには白の先へ幅三寸ぐらいの赤い絹が縫足ぬいたしてあった。彼らはみな白のくくばかま穿いていた。そうして一様いちよう胡坐あぐらをかいた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
寄手の将士もみな一様いちような眼をそこにこらした。矢倉の下なる監物と、上なる光春とのあいだに、なお数語が取り交わされた。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それ故もののある場所やそのわざは、万べんなく一様いちように行き渡っているわけではありません。日本は今どんな所でどんなものを作っているのでしょうか。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
駕籠の前に立って二人の武士が、足音を盗んで歩いていたが、かぶっているところの覆面頭巾も、着ているところの無地の衣裳も、一様いちように濃厚な緑色であった。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ただ一様いちように影が薄く印象があわくなって行こうとしているのは淋しいことで、それがまだかろうじて間に合ううちに、比較の学問の燭光に照らされ出したということは
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「あなたのむすこさんは、ただしいことをしない、みんなを、えこひいきなく一様いちようにあつかうことをしない。さもなければ、わたしにしても、こんなに貧乏で、ふしあわせなはずはないのさ」
果実の食用となる部分は、果実の種類によってかならずしも一様いちようではない。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
橋のたもと銀杏いちょうの樹も、岸の柳も、豆腐屋の軒も、角家の塀も、それに限らず、あたりに見ゆるものは、門の柱も、石垣も、みな傾いて居る、傾いて居る、傾いて居るがことごと一様いちようむきにではなく
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「いや、その感度が一様いちようにいってないので、困っていることもあるんだ」
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
前に申した女たちは、そのけんなる美なる楚々そそなること、各〻おのおのおもむきはちがっても、すべてみな一様いちように肉愛の花々だ。この秀吉は、浮気な蝶々。蝶と花との関係にすぎぬ。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今までの植物家は多分一様いちように、ズズダマという名の起こりを仏教の数珠じゅずたくし、子供がこの草の実をって信心者の真似をする故に、そうい始めたものと解している。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
その上自分をはなはだ若く考えている敬太郎には、四十代だろうが五十代だろうが乃至ないし六十代だろうがほとんど区別のない一様いちようの爺さんに見えるくらい、彼は老人に対して親しみのない男であった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「わしは、だれでもかれでも一様いちようにする死神さ」
上皇院政の積弊せきへいや、皇室をめぐる貴族対貴族の、立后の競争や、女院のかげに秘謀を思う官僚など、保元のもとは、一様いちようではありませんが、中にも、乱後、讃岐さぬきへ流されて
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
或いは大抵は目的が笑いにあるから、笑話わらいばなしと謂ってもよいかと思うが、笑話は必ずしもこのような不可能事を説く場合だけに限られていない。そうしてまた動機も一様いちようでない。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)