一概いちがい)” の例文
いだいていたかも知れず一概いちがいに利太郎であるとは断定し難いまた必ずしも痴情ちじょう沙汰さたではなかったかも知れない金銭上の問題にしても
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
これらをてもこの時代じだい人間にんげん一概いちがい野蠻人やばんじんだとはいへない、たゞ金屬きんぞく使用しようすることをらなかつたといふにすぎないのです。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
ただスリラアという侮蔑ぶべつ的呼称の連想から、一概いちがいに低調なものと思い込んでいるむきがあるかも知れないと考えたことが、一つの理由であった。
探偵小説の「謎」 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
しかし、これにもまたいろいろ長短があり一概いちがいにはいえぬが、実はこれを見破みやぶるほどの食通しょくつうもいないので、商売繁昌はんじょう、客にもわかる人はきわめて少ない。
握り寿司の名人 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
日本の絵画の年々進歩するのは争うべからざる事実ではあるが、その原因を某氏のように一概いちがいに文部省の展覧会に帰するのは間違っているように思われる。
文芸委員は何をするか (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
もっとも大蔵大臣の事についてかれこれ証拠立てて言う人もありましたけれども、その人はどういう性質の人か解らぬから一概いちがいに信用することが出来なかった。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
だから正岡まさをかの書いたことは一概いちがいに譃とも云はなければ、一概にほんたうとも云はれないさ
正岡子規 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
それを大掴おおづかみに、恋歌こいかを書き散らして参った。しからぬ事と、さ、それも人によりけり、御経おきょうにも、若有女人設欲求男にゃくうにょにんせつよくぐなん、とありまするから、一概いちがいとがめ立てはいたさんけれども。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もちろんかういふうたをまねたものがおほいからといつて、日本につぽん文學ぶんがく悲觀的ひかんてき文學ぶんがくだなどゝ、よくも道理どうりらないで、一概いちがいにばかにしてかゝるのはいけないくせだとおもひます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
一概いちがいにそうは考えていないんです。人間が組織の中に生きている以上、いっさいの個人的関心を乗りこえて果たさなければならない公けの義務があることは、ぼくも知っています。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
その休息時間きゆうそくじかん長短ちようたんあるひ休眠きゆうみんからめたときの活動かつどうぶりにも各火山かくかざんにめい/\の特色とくしよくがあつて、一概いちがいにはいへないが、平均期間へいきんきかんよりもなが休止きゆうししたのち噴火ふんか平均へいきん場合ばあひよりもつよ
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
西洋人は一体いったいに女性尊重と見做みなされているが、一概いちがいにそうも言い切れない。
女性崇拝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
では、彼の眼前に鼻から息を吹いているあわれな動物が、彼自身で、それに手荒な鞭を加えるものは誰なのだろう。吉川夫人? いや、そう一概いちがいに断言する訳には行かなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そう一概いちがいなことも出来ないよ。この先一年もつか二年もつか知れないが、おれの寿命はきまっているのだし、そこへ持って来て母親までなくしては、あんまり子供が可哀相かわいそうだからね。
お勢登場 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それは冗談じようだんであるけれども、さういふ風に人物なり事件なりが予定とちがつて発展をする場合、ちがつために作品がよくなるか、わるくなるかは一概いちがいに言へないであらうと思ふ。
日本料理といっても、一概いちがいにこれが日本料理だと簡単にいい切れるものではない。いい切った後から、とやかくと問題が起こり、水掛みずかけ論が長びき、焦点がぼけてしまうのが常だからだ。
味覚馬鹿 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
ほかの小供も一概いちがいにこんなものだろうと思っていた。ただ清が何かにつけて、あなたはお可哀想かわいそうだ、不仕合ふしあわせだと無暗に云うものだから、それじゃ可哀想で不仕合せなんだろうと思った。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
これは体質の相違だろうから、一概いちがいに女をわからず屋とするわけにはいかぬ。
鮪を食う話 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
一概いちがいに唯インデペンデントであるということを主張するのではないのであります。
模倣と独立 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
何事によらず一概いちがいの論はよろしくない。
握り寿司の名人 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)